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2024年8月16日

微分係数をもたない例を挙げてみる

微分係数が値をもつ条件
 関数$y=f(x)$の$x=c$における微分係数$f'(c)$の定義式は
\[\large f'(c)=\lim_{h\to0}\frac{f(c+h)-f(c)}{h}\]
です。
ここで、極限$\lim_{x\to c}f(x)$が値$α$をもつためには
\[\lim_{x\to c-0}f(x)=\lim_{x\to c+0}f(x)=\alpha\]
である必要があります。
$\lim_{x\to c-0}f(x)$は$x$を$c$より小さい値から$c$に限りなく近づける左側極限、$\lim_{x\to c+0}f(x)$は$x$を$c$より大きい値から$c$に限りなく近づける右側極限です。
したがって、微分係数$f'(c)$の定義式においては微分係数$f'(c)$が値$α$をもつためには
\[\lim_{h\to-0}\frac{f(c+h)-f(c)}{h}=\lim_{h\to+0}\frac{f(c+h)-f(c)}{h}=\alpha\]
が成り立つ必要があります。

以上を前提として、微分係数をもつ例ではなく微分係数をもたない例ををいくつか紹介し、その理由を考えます。

1. 定義されていない・定義できない場合

 $y=\dfrac{1}{x^2}$の$x=0$における微分係数を求めてみます。
この関数のグラフは下図のようになり、$x=0$のときの$y$は定義できません。
y=1/x^2のグラフ
これはすなわち微分係数の定義式に$c=0$を代入した
\[\lim_{h\to0}\frac{f(0+h)-f(0)}{h}\]
の$f(0)$の値がないということなので微分係数を求めることができません。
したがって、$y=\dfrac{1}{x^2}$は$x=0$において微分係数をもちません。

このように、関数の値が定義されていない・定義できない$x$においては微分係数をもちません。

2. 連続でない点である場合

\[y=\begin{cases}-1&(x<2)\\[0.5em]1&(x\geqq2)\end{cases}\]
という関数を考えます。この関数は$x=2$で連続ではなく、グラフは下図のようになります。
y=-1 (x<2), 1 (x≧2)のグラフとx=2における点
この関数の$x=2$における微分係数を求めてみます。
すると、微分係数の定義式に$c=2$を代入した
\[\lim_{h\to0}\frac{f(2+h)-f(2)}{h}\]
が値をもつかを調べることになります。

左側極限

 $x=2+h$は$x<2$の範囲内にあるので$f(2+h)=-1$。
したがって、
\begin{align*}\lim_{h\to-0}\frac{f(2+h)-f(2)}{h}&=\lim_{h\to-0}\frac{-1-1}{h}\\[0.5em]&=\lim_{h\to-0}\frac{-2}{h}\\[0.5em]&=\infty\end{align*}

右側極限

 $x=2+h$は$x\geqq2$の範囲内にあるので$f(2+h)=1$。
したがって、
\begin{align*}\lim_{h\to+0}\frac{f(2+h)-f(2)}{h}&=\lim_{h\to+0}\frac{1-1}{h}\\[0.5em]&=\lim_{h\to+0}\frac{0}{h}\\[0.5em]&=0\end{align*}
以上より、左側極限は発散して値をもたないために左側極限と右側極限の値が一致しないので、この関数は$x=2$において微分係数をもちません。

このように、連続でない点において微分係数の左側極限・右側極限の少なくとも一方が値をもたないために微分係数をもちません。

3. 尖っている部分の点である場合

 連続関数であっても微分係数をもたない場合があります。
例えば$y=|x|$は連続関数でグラフが下図のようになり、$x=0$で折れ曲がり尖っています。
y=|x|のグラフとx=0における点
この関数の$x=0$における微分係数を求めてみると、微分係数の定義式に$c=0$を代入した
\[\lim_{h\to0}\frac{f(0+h)-f(0)}{h}=\lim_{h\to0}\frac{f(h)-f(0)}{h}\]
が値をもつかを調べることになります。
$y=|x|$を絶対値記号を使わずに表すと
\[y=\begin{cases}-x&(x<0)\\[0.5em]x&(x\geqq0)\end{cases}\]
となるので、

左側極限

 $x=h$は$x<0$の範囲にあるので$f(h)=-h$。
したがって、
\begin{align*}\lim_{h\to-0}\frac{f(h)-f(0)}{h}&=\lim_{h\to-0}\frac{-h-0}{h}\\[0.5em]&=\lim_{h\to-0}-1\\[0.5em]&=-1\end{align*}

右側極限

 $x=h$は$x\geqq0$の範囲にあるので$f(h)=h$。
したがって、
\begin{align*}\lim_{h\to+0}\frac{f(h)-f(0)}{h}&=\lim_{h\to+0}\frac{h-0}{h}\\[0.5em]&=\lim_{h\to+0}1\\[0.5em]&=1\end{align*}
以上より、左側極限と右側極限の値が一致しないので、$y=|x|$は$x=0$において微分係数をもちません。

このように関数のグラフの尖っている部分の$x$においては微分係数をもちません。
連続関数がすべての$x$で微分係数をもつ、すなわち微分可能であるためには、そのグラフに尖っている部分がなく滑らかであることが直感的な条件となります。

 例を挙げてみてきた通り、微分係数をもたない、すなわち微分可能でないのは
  • 関数が定義されていない・定義できない点
  • 関数の連続でない点
  • 関数の尖っている点
である場合でした。
これらは、厳密な証明ではないものの命題「関数$f(x)$が$x=a$で連続でないならば$f(x)$は$x=a$で微分可能でない」が真であることの判断材料になり、間接的に対偶「関数$f(x)$が$x=a$で微分可能であるならば$f(x)$は$x=a$で連続」が真であることの判断材料になるかと思います。

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