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2023年6月29日

sin(ax+b)、cos(ax+b)、tan(ax+b)の周期

  実関数$\sin(ax+b),\cos(ax+b),\tan(ax+b)$ $(a,b:実数;a\neq0)$の周期は何でしょうか?


 周期とは、周期関数が持つ特徴を表す値のことです。
周期関数とは、$0$でない定数$p$をもちいて
\[f(x+p)=f(x)\]
が常に成り立つような関数$f(x)$のことをいいます。このときの$p$が周期です。
周期関数$f(x)$は任意の$x$から$p$だけ増加するごとに繰り返し同じ値を取ります。

周期$p$として満足する値のうち、最小の正の数であるもののことを基本周期といいます。
周期$p$として満足する値はすべてこの基本周期の整数倍となります。
したがって、周期関数において
\[f(x+np)=f(x)\quad(n:整数)\]
もまた常に成り立ちます。
 周期関数には三角関数の$\sin x,\cos x,\tan x$も含まれますが、これは本当でしょうか?
また、これらの基本周期は何でしょうか?単位円から求めてみます。

$\sin x$の基本周期

 $\sin x$が周期関数であるためには、
\[\sin(x+p)=\sin x\]
を満たすような実数$p$が存在しなくてはなりません。これは$f(x+p)$が$x$を$x+p$に変換したものであることから導くことができます。このような$p$が存在するかを単位円から探してみます。
sinx=sin(π-x)
 $\sin x$は単位円において、$x$の角度をなす動径と単位円との交点のy座標を表します。
単位円周上においてこれと等しいy座標を持つ点はなす角が$\pi-x$である動径と単位円との交点となります。これらの点は常にy軸に関して対称な位置関係にあります。
すなわち$\sin x=\sin(\pi-x)$がすべての$x$に対し常に成り立つということです。
さらに$x,\pi-x$のときの動径が表す角は、$2\pi$の整数倍だけ原点を中心に回転させたものも含まれるため
\begin{array}{cccl}x&\Rightarrow&x+2n\pi&(n:整数)\\[1em]\pi-x&\Rightarrow&(2m+1)\pi-x&(m:整数)\end{array}
となります。
このことから
\[\sin x=\sin(x+2n\pi)=\sin\bigl\{(2m+1)\pi-x\bigr\}\]
が常に成り立ちます。
 $\sin x$と常に等しい$\sin(x+2n\pi),\sin\bigl\{(2m+1)\pi-x\bigr\}$のうち、$\sin(x+p)$として適しているのは$\sin(x+2n\pi)$となります。
したがって、
\begin{equation}\sin(x+2n\pi)=\sin x\end{equation}
より$\sin x$は周期関数であることがわかります。周期は$\mathbf{2n\pi}$です。
また、周期$2n\pi$において最小の正の数であるものは$n=1$のときの$2\pi$です。
ゆえに、$\sin x$の基本周期は$\mathbf{2\pi}$であることがわかります。
y=sinxのグラフ
 $\sin x$は$2\pi$ごとに同じ値を繰り返しとるので、グラフも同じ形が$2\pi$の間隔ごとに現れます。

$\cos x$の基本周期

 $\sin x$と同様に基本周期を求めてみます。
$\cos x$が周期関数であるためには、
\[\cos(x+p)=\cos x\]
を満たすような実数$p$が存在する必要があるので、このような$p$が存在するのかを単位円から探してみます。
cosx=cos(-x)
 $\cos x$は単位円において、$x$の角度をなす動径と単位円との交点のx座標を表します。
単位円周上においてこれと等しいx座標を持つ点はなす角が$-x$である動径と単位円との交点となります。これらの点は常にx軸に関して対称な位置関係にあります。
すなわち$\cos x=\cos(-x)$がすべての$x$に対し常に成り立つということです。
さらに$x,-x$それぞれのときの動径が表す角は、$2\pi$の整数倍だけ原点を中心に回転させたものも含まれるため
\begin{array}{cccl}x&\Rightarrow&x+2n\pi&(n:整数)\\[1em]-x&\Rightarrow&-x+2m\pi&(m:整数)\end{array}
となります。
このことから
\[\cos x=\cos(x+2n\pi)=\cos(-x+2m\pi)\]
が常に成り立ちます。
$\cos(x+2n\pi),\cos(-x+2m\pi)$のうち$\cos(x+p)$として適したものは$\cos(x+2n\pi)$となります。
したがって、
\begin{equation}\cos(x+2n\pi)=\cos x\end{equation}
より$\cos x$は周期関数であることがわかります。周期は$2n\pi$です。
また、周期$2n\pi$において最小の正の数であるものは$n=1$のときの$2\pi$です。
ゆえに、$\cos x$の基本周期は$\mathbf{2\pi}$であることがわかります。
y=cosxのグラフ
 $\cos x$は$2\pi$ごとに同じ値を繰り返しとるので、グラフも同じ形が$2\pi$の間隔ごとに現れます。

$\tan x$の基本周期

 $\tan x$が周期関数であるためには、
\[\tan(x+p)=\tan x\]
を満たすような実数$p$が存在する必要があるので、そのような$p$が存在するのかを単位円から探してみます。
tanx=tan(x+π)
 $\tan x$は単位円において、$x$の角度をなす動径と$(1,0)$における単位円の接線$x=1$との交点のy座標を表します。
同じ位置に交点を持つような動径はなす角が$x+\pi$である動径となります。これらの動径は常に原点に関して対称な位置関係にあります。
すなわち$\tan x=\tan(x+\pi)$が常に成り立つということです。
さらに$x,x+\pi$それぞれのときの動径が表す角は、$2\pi$の整数倍だけ原点を中心に回転させたものも含まれるため
\begin{array}{cccl}x&\Rightarrow&x+2n\pi&(n:整数)\\[1em]x+\pi&\Rightarrow&x+(2m+1)\pi&(m:整数)\end{array}
となりますが、これらの角はすべて$x$に$\pi$の整数倍を加えてつくることができる角であるので整数$k$をもちいて$x+k\pi$と書くことができます。
このことから
\[\tan x=\tan(x+k\pi)\]
が常に成り立ちます。
$\tan(x+k\pi)$は$\tan(x+p)$として適しています。
したがって、
\begin{equation}\tan(x+k\pi)=\tan x\end{equation}
より$\tan x$は周期関数であることがわかります。周期は$n\pi$です。
また、周期$k\pi$において最小の正の数であるものは$k=1$のときの$\pi$です。
ゆえに、$\tan x$の基本周期は$\mathbf{\pi}$であることがわかります。
y=tanxのグラフ
 $\tan x$は$\pi$ごとに同じ値を繰り返しとるので、グラフも同じ形が$\pi$の間隔ごとに繰り返し現れます。

 基本の三角関数$\sin x,\cos x,\tan x$が周期関数であること、そして基本周期を求めました。
次は$\sin(ax+b),\cos(ax+b),\tan(ax+b)$がそれぞれ周期関数であるか、周期関数であるなら基本周期はなにかを求めてみます。

$\sin(ax+b)$の基本周期

 $\sin x$の項で触れたように$f(x+p)$が$x$を$x+p$に変換したものであるので、$\sin(ax+b)$が周期関数であるならば、$\sin\big\{a(x+p)+b\bigr\}=\sin(ax+b)$を満たすような実数$p$が存在するはずです。このような$p$が存在するかを確かめます。
左辺を変形します。
\begin{align*}\sin\big\{a(x+p)+b\bigr\}&=\sin(ax+b)\\[0.5em]\sin(ax+b+ap)&=\sin(ax+b)\\[0.5em]\sin\bigl\{(ax+b)+ap\bigr\}&=\sin(ax+b)\end{align*}
$ax+b=t$とおくと
\[\sin(t+ap)=\sin t\]
となります。
$(1)$より$\sin(t+2n\pi)=\sin t\ (n:整数)$が成り立つので、2式を比較すると$ap=2n\pi$です。
$p$について解くと
\[p=\frac{2n\pi}{a}\]
となり、$\sin\big\{a(x+p)+b\bigr\}=\sin(ax+b)$を満たすような実数$p$が存在するので$\sin(ax+b)$は周期関数であることがわかります。そして周期$p$にあたる部分は$\dfrac{2n\pi}{a}$なので、これが$\sin(ax+b)$の周期となります。
周期に着目すると$x$の係数$a$のみが周期に影響し、$b$は影響しないことがわかります。
 基本周期を求めます。

$a<0$のとき

 $a<0$のとき周期は
\begin{align*}\frac{2n\pi}{a}&=\frac{2n\pi}{-|a|}\\[0.5em]&=-\frac{2n\pi}{|a|}\end{align*}
となります。
基本周期は最小の正の数であるため、$n=-1$のときの$\dfrac{2\pi}{|a|}$であることがわかります。

$a>0$のとき

 $a>0$のとき周期は
\[\frac{2n\pi}{a}=\frac{2n\pi}{|a|}\]
と書けます。
基本周期は$n=1$のときの$\dfrac{2\pi}{|a|}$であることがわかります。


以上より$\sin(ax+b)$の基本周期は$a$の正負によらず$\mathbf{\dfrac{2\pi}{|a|}}$であることがわかりました。

$\cos(ax+b)$の基本周期

 $\cos(ax+b)$が周期関数であるならば、$\cos\bigl\{a(x+p)+b\bigr\}=\cos(ax+b)$を満たすような実数$p$が存在するはずです。このような$p$が存在するかを確かめます。
左辺を変形します。
\begin{align*}\cos\big\{a(x+p)+b\bigr\}&=\cos(ax+b)\\[0.5em]\cos(ax+b+ap)&=\cos(ax+b)\\[0.5em]\cos\bigl\{(ax+b)+ap\bigr\}&=\cos(ax+b)\end{align*}
$ax+b=t$とおくと
\[\cos(t+ap)=\cos t\]
となります。
$(2)$より$\cos(t+2n\pi)=\cos t\ (n:整数)$が成り立つので、2式を比較すると$ap=2n\pi$です。
$p$について解くと
\[p=\frac{2n\pi}{a}\]
となり、$\cos\big\{a(x+p)+b\bigr\}=\cos(ax+b)$を満たすような実数$p$が存在するので$\cos(ax+b)$は周期関数であることがわかります。そして周期$p$にあたる部分は$\dfrac{2n\pi}{a}$なので、これが$\cos(ax+b)$の周期となります。
 基本周期を求めます。

$a<0$のとき

 $a<0$のとき周期は
\begin{align*}\frac{2n\pi}{a}&=\frac{2n\pi}{-|a|}\\[0.5em]&=-\frac{2n\pi}{|a|}\end{align*}
となります。
基本周期は最小の正の数であるため、$n=-1$のときの$\dfrac{2\pi}{|a|}$であることがわかります。

$a>0$のとき

 $a>0$のとき周期は
\[\frac{2n\pi}{a}=\frac{2n\pi}{|a|}\]
と書けます。
基本周期は$n=1$のときの$\dfrac{2\pi}{|a|}$であることがわかります。


以上より$\cos(ax+b)$の基本周期は$a$の正負によらず$\mathbf{\dfrac{2\pi}{|a|}}$であることがわかりました。

$\tan(ax+b)$の基本周期

 $\tan(ax+b)$が周期関数であるならば、$\tan\bigl\{a(x+p)+b\bigr\}=\tan(ax+b)$を満たすような実数$p$が存在するはずです。このような$p$が存在するかを確かめます。
左辺を変形します。
\begin{align*}\tan\big\{a(x+p)+b\bigr\}&=\tan(ax+b)\\[0.5em]\tan(ax+b+ap)&=\tan(ax+b)\\[0.5em]\tan\bigl\{(ax+b)+ap\bigr\}&=\tan(ax+b)\end{align*}
$ax+b=t$とおくと
\[\tan(t+ap)=\tan t\]
となります。
$(3)$より$\tan(t+n\pi)=\tan t\ (n:整数)$が成り立つので、2式を比較すると$ap=n\pi$です。
$p$について解くと
\[p=\frac{n\pi}{a}\]
となり、$\tan\big\{a(x+p)+b\bigr\}=\tan(ax+b)$を満たすような実数$p$が存在するので$\tan(ax+b)$は周期関数であることがわかります。そして周期$p$にあたる部分は$\dfrac{n\pi}{a}$なので、これが$\tan(ax+b)$の周期となります。
 基本周期を求めます。

$a<0$のとき

 $a<0$のとき周期は
\begin{align*}\frac{n\pi}{a}&=\frac{n\pi}{-|a|}\\[0.5em]&=-\frac{n\pi}{|a|}\end{align*}
となります。
基本周期は最小の正の数であるため、$n=-1$のときの$\dfrac{\pi}{|a|}$であることがわかります。

$a>0$のとき

 $a>0$のとき周期は
\[\frac{n\pi}{a}=\frac{n\pi}{|a|}\]
と書けます。
基本周期は$n=1$のときの$\dfrac{\pi}{|a|}$であることがわかります。


以上より$\tan(ax+b)$の基本周期は$a$の正負によらず$\mathbf{\dfrac{\pi}{|a|}}$であることがわかりました。

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