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2023年5月3日

アルベロス図形とは

アルベロス図形
 半円$AB$の直径$AB$上に点$C$をおき、$AB$に関して弧$AB$と同じ側に円弧があるように半円$AC$と半円$BC$を描きます。このとき3つの円弧によって囲まれた図形のことをアルベロス図形といいます。

この図形には、以下のような性質があります。

アルベロス図形の性質
  • 点$C$から直径$AB$に対する垂線を引き、弧$AB$との交点を$D$としたとき、線分$CD$を直径とする円(上図の赤い円)の面積とアルベロス図形$ABC$の面積は等しい。
  • 線分$AD$と半円$AC$の$A$以外の交点を$E$、線分$BD$と半円$BC$の$B$以外の交点を$F$とすると、4点$C,D,E,F$は同一円周上にあり、四角形$CEDF$は長方形となる。
  • 直線$EF$は半円$AC$と半円$BC$の共通接線となる。
これらが成り立つことを確かめてみます。

アルベロス図形の面積

アルベロス図形の面積
 アルベロス図形$ABC$の面積は半円$AB$の面積から、半円$AC$と半円$BC$の面積を引くことで求められます。
半円$AB$の直径を$R$、半円$AC$の直径を$r$とすると、半円$BC$の直径は$R-r$となります。
半円$AB$の面積は
\[\frac{1}{2}\cdot\pi\left(\frac{R}{2}\right)^2=\frac{\pi R^2}{8}\]
半円$AC$の面積は
\[\frac{1}{2}\cdot\pi\left(\frac{r}{2}\right)^2=\frac{\pi r^2}{8}\]
半円$BC$の面積は
\begin{align*}\frac{1}{2}\cdot\pi\left(\frac{R-r}{2}\right)^2&=\frac{\pi(R-r)^2}{8}\\[0.5em]&=\frac{\pi\left(R^2+r^2-2Rr\right)}{8}\end{align*}
なので、アルベロス図形$ABC$の面積は
\begin{equation}\frac{\pi R^2}{8}-\left\{\frac{\pi r^2}{8}+\frac{\pi\left(R^2+r^2-2Rr\right)}{8}\right\}=\frac{\pi r(R-r)}{4}\end{equation}
となります。
 次に線分$CD$を直径とする円の面積を求めます。
線分$CD$の長さはGeometric mean theoremより$CD=\sqrt{r(R-r)}$となります。
したがって、面積は
\begin{equation}\pi\left(\frac{\sqrt{r(R-r)}}{2}\right)^2=\frac{\pi r(R-r)}{4}\end{equation}
となります。

(1)、(2)よりアルベロス図形$ABC$と$CD$を直径とする円の面積は等しくなることがわかります。

アルベロス図形の面積は以下に紹介する動画のように証明することもできます。
リンク:Arbelos Area (visual proof) - YouTube


4点$C,D,E,F$について

アルベロス図形と同一円周上の4点
 半円$AB$において3点$A,B,D$は弧$AB$上にあるので、タレスの定理より$∠ADB=90°$となります。すなわち$∠EDF=90°$です。

半円$AC$において3点$A,C,E$は弧$AC$上にあり、半円$BC$において3点$B,C,F$は弧$BC$上にあるので、同様に$∠AEC=∠BFC=90°$となります。このことから$∠CED=∠CFD=90°$です。

ここで、3点$C,D,E$において$∠CED=90°$であるから、タレスの定理の逆より3点は線分$CD$を直径とする円の円周上に存在することがわかります。
同様に3点$C,D,F$において$∠CFD=90°$であるから、これらも$CD$を直径とする円の円周上に存在します。

線分$CD$を直径とする円はただ1つなので、4点$C,D,E,F$は同一円周上にあります。

 このことから四角形$CEDF$は円に内接する四角形であることがわかるので、対角の和は$180°$となります。

したがって、$∠EDF=90°$より対角$∠ECF$の大きさは$90°$です。

内角がすべて$90°$である四角形$CEDF$は長方形であることがわかります。


直線$EF$について

アルベロス図形と2つの半円の共通接線
 線分$CD$を直径とする円の中心を$O$、半円$AC$の中心を$M$、半円$BC$の中心を$N$とします。このとき点$O$は内接する長方形$CEDF$の2本の対角線の交点かつ中点、すなわち線分$CD,EF$の中点となります。

円$O$において$OC=OE=OF$なので、$△OCE$と$△OCF$は二等辺三角形であり、$∠OCE=∠OEC\ \cdots(a),$$∠OCF=∠OFC\ \cdots(b)$が成り立ちます。

半円$AC$において$MC=ME$なので、$△MCE$は二等辺三角形であり、$∠MCE=∠MEC\ \cdots(c)$が成り立ちます。

半円$BC$において$NC=NF$なので、$△NCF$は二等辺三角形であり、$∠NCF=∠NFC\ \cdots(d)$が成り立ちます。

ここで$CD\perp AB$すなわち$OC\perp MN$より$∠OCM=∠OCE+∠MCE=90°$です。
すると、(a)、(c)より
\[∠OEC+∠MEC=∠OEM=90°\]
となり、直線$OE$すなわち直線$EF$は半円$AC$の接線であることがわかります。
また、$∠OCN=∠OCF+∠NCF=90°$、(b)、(d)より
\[∠OFC+∠NFC=∠OFN=90°\]
となり、直線$OF$すなわち直線$EF$は半円$BC$の接線であることがわかります。

したがって以上より、直線$EF$は半円$AC$と半円$BC$の共通接線であることがわかります。

これは半円$AC,BC$それぞれのもととなる円$M,N$の共通外接線でもあります。
また、直線$CD$は円$M,N$の共通内接線となります。

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