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2023年5月27日

アルキメデスの双子円の半径を求める

アルベロス図形
アルベロス図形とは、上図のように直線に関して同じ側に円弧がある3つの半円の弧に囲まれた図形のことです。
アルキメデスの双子円
そして、上図のようにアルベロス図形\text{ABC}を小さい2つの半円の交点\text{D}を通る直径\text{AB}に垂直な直線\text{CD}で分割してできる図形\text{ACD, BCD}それぞれの内接円のことをアルキメデスの双子円といいます。双子円という名の通り半径が等しく、半円\text{AC}の半径をa、半円\text{BC}の半径をbとすると
\frac{ab}{a+b}
と表されます。

これが成り立つことを座標平面をもちいて確かめてみます。


座標平面上にアルベロス図形を描く
 0以上の実数a,bをもちいて、原点を通る半径a、中心\text{P}(-a,0)の円と原点を通る半径b、中心\text{Q}(b,0)の円を描きます。これらがアルベロス図形を形づくる小さい2つの半円のもととなる円です。
\text{P, Q}それぞれの円の方程式は
\begin{array}{l}\text{P}:&(x+a)^2+y^2=a^2\\[1em]\text{Q}:&(x-b)^2+y^2=b^2\end{array}
となります。
これらの円と内接する円\text{R}の半径はa+b、中心は(b-a,0)となるので円の方程式は
\text{R}:\quad\bigl\{x-(b-a)\bigr\}^2+y^2=(a+b)^2
となります。

\text{P}の原点でないx軸との交点を\text{A}、円\text{Q}の原点でないx軸との交点を\text{B}とすると、x軸に対称な1組のアルベロス図形\text{OAB}ができるのですが、ここでは領域y\geqq0内にあるほうのアルベロス図形\text{OAB}に着目します。


図形\text{OAC}の内接円の半径を求める

 弧\text{AB}とy軸との交点を\text{C}とし、図形\text{OAC}の内接円\text{X}について考えます。
アルキメデスの双子円Xの中心の存在範囲
図形\text{OAC}はy軸、円\text{P, R}に囲まれた図形であることから、内接円\text{X}について以下のようにいうことができます。
  1. \text{X}はy軸と接する。
  2. \text{X}は円\text{P}と外接している。
  3. \text{X}は円\text{R}と内接している。
これらをもちいて円\text{X}の半径を求めます。

1. 円\text{X}はy軸と接する

 円\text{X}の中心を(s,t)とおくと円\text{X}の半径は点(s,t)とy軸の距離に等しいので|s|となります。円\text{X}は領域x\leqq0内に存在するのでs\leqq0より|s|=-sです。
このことから円\text{X}の中心は少なくとも直線x=s\ \cdots(1)上に存在しているといえます。

2. 円\text{X}は円\text{P}と外接している

 円\text{X}は円\text{P}と外接しているので、中心間の距離はa+|s|=a-sとなります。
このことから円\text{X}の中心は少なくとも半径a-sの円\text{P}の同心円、すなわち円(x+a)^2+y^2=(a-s)^2\ \cdots(2)上に存在するといえます。

3. 円\text{X}は円\text{R}と内接している

 円\text{X}は円\text{R}と内接しているので、中心間の距離はa+b-|s|=a+b+sとなります。
このことから円\text{X}の中心は少なくとも半径a+b+sの円\text{R}の同心円、すなわち円\bigl\{x-(b-a)\bigr\}^2+y^2=(a+b+s)^2\ \cdots(3)上に存在するといえます。

 円\text{X}の中心は(1),(2),(3)の交点にあるので、これらを連立して解きます。
(3)-(2)より
\begin{align*}\bigl\{x-(b-a)\bigr\}^2-(x+a)^2&=(a+b+s)^2-(a-s)^2\\[0.5em]\Bigl[\bigl\{x-(b-a)\bigr\}+(x+a)\Bigr]\Bigl[\bigl\{x&-(b-a)\bigr\}-(x+a)\Bigr]\\ =\bigl\{(a+b+s)+(a-s)\bigr\}&\bigl\{(a+b+s)-(a-s)\bigr\}\\[0.5em](2x+2a-b)(-b)&=(2a+b)(b+2s)\\[0.5em]2s(2a+b)+2bx&=-4ab\end{align*}
(1)を代入して
\begin{align*}2s(2a+b)+2bs&=-4ab\\[0.5em]4s(a+b)&=-4ab\\[0.5em]s&=-\frac{ab}{a+b}\end{align*}
したがって、円Xの中心のx座標は-\dfrac{ab}{a+b}なので、半径は\dfrac{ab}{a+b}であることがわかります。

図形\text{OBC}の内接円の半径を求める

 次は図形\text{OBC}の内接円\text{Y}について考えます。
アルキメデスの双子円Yの中心の存在範囲
内接円\text{X}のときと同様に、図形\text{OBC}はy軸、円\text{Q, R}に囲まれた図形であることから以下のようにいうことができます。
  1. \text{Y}はy軸に接している。
  2. \text{Y}は円\text{Q}と外接している。
  3. \text{Y}は円\text{R}と内接している。
これらをもちいて円\text{Y}の半径を求めます。

1. 円\text{Y}はy軸に接している

 円\text{Y}の中心を(u,v)とおくと円\text{Y}の半径は|u|となります。円\text{Y}は領域x\geqq0内に存在するので|u|=uとなります。
このことから円\text{Y}は少なくとも直線x=u\ \cdots(4)上に存在しているといえます。

2. 円\text{Y}は円\text{Q}と外接している

 円\text{Y}は円\text{Q}と外接しているので、中心間の距離はb+uとなります。
このことから円\text{Y}は少なくとも半径b+uの円\text{Q}の同心円、すなわち円(x-b)^2+y^2=(b+u)^2\ \cdots(5)上に存在しているといえます。

3. 円\text{Y}は円\text{R}と内接している

 円\text{Y}は円\text{R}と内接しているので、中心間の距離はa+b-uとなります。
このことから円\text{Y}は少なくとも半径a+b-uの円\text{R}の同心円、すなわち円\bigl\{x-(b-a)\bigr\}^2+y^2=(a+b-u)^2\ \cdots(6)上に存在しているといえます。

 円\text{Y}の中心は(4),(5),(6)の交点にあるので、これらを連立して解きます。
(6)-(5)より
\begin{align*}\bigl\{x-(b-a)\bigr\}^2-(x-b)^2&=(a+b-u)^2-(b+u)^2\\[0.5em](2x+a-2b)\cdot a&=(a+2b)(a-2u)\\[0.5em]2u(a+2b)+2ax&=4ab\end{align*}
(4)を代入して
\begin{align*}2u(a+2b)+2au&=4ab\\[0.5em]4u(a+b)&=4ab\\[0.5em]u&=\frac{ab}{a+b}\end{align*}
したがって、円\text{Y}の中心のx座標と半径は\dfrac{ab}{a+b}であることがわかります。

 以上より、アルキメデスの双子円である円\text{X, Y}の半径はともに\dfrac{ab}{a+b}であることを確かめることができました。

双子円の中心のy座標

 本記事の目的はアルキメデスの双子円の半径を求めることなので、その過程で円\text{X, Y}のx座標のみ求めましたが、さらにy座標も求めてみます。
\text{X, Y}の中心の座標はそれぞれ\left(-\dfrac{ab}{a+b},t\right),\left(\dfrac{ab}{a+b},v\right)、円\text{R}との中心距離はどちらの円もa+b-\dfrac{ab}{a+b}であることを利用すると以下のように求められます。

\text{X}のy座標

\begin{align*}\sqrt{\left\{(b-a)-\left(-\frac{ab}{a+b}\right)\right\}^2+t^2}&=a+b-\frac{ab}{a+b}\\[0.5em]\left\{(b-a)+\frac{ab}{a+b}\right\}^2+t^2&=\left(a+b-\frac{ab}{a+b}\right)^2\\[0.5em](b-a)^2+\frac{2ab(b-a)}{a+b}+t^2&=(a+b)^2-2ab\\[0.5em]t^2&=2ab-\frac{2ab(b-a)}{a+b}\\[0.5em]&=2ab\left(1-\frac{b-a}{a+b}\right)\\[0.5em]&=\frac{4a^2b}{a+b}\\[0.5em]t&=2a\sqrt{\frac{b}{a+b}}&(\because t\geqq0)\end{align*}

\text{Y}のy座標

\begin{align*}\sqrt{\left\{(b-a)-\frac{ab}{a+b}\right\}^2+v^2}&=a+b-\frac{ab}{a+b}\\[0.5em]\left\{(b-a)-\frac{ab}{a+b}\right\}^2+v^2&=\left(a+b-\frac{ab}{a+b}\right)^2\\[0.5em](b-a)^2-\frac{2ab(b-a)}{a+b}+v^2&=(a+b)^2-2ab\\[0.5em]v^2&=2ab+\frac{2ab(b-a)}{a+b}\\[0.5em]&=2ab\left(1+\frac{b-a}{a+b}\right)\\[0.5em]&=\frac{4ab^2}{a+b}\\[0.5em]v&=2b\sqrt{\frac{a}{a+b}}&(\because v\geqq0)\end{align*}
したがって、円\text{X, Y}の中心の座標はそれぞれ以下のようになります。
\begin{align*}\text{X}:&\left(-\frac{ab}{a+b},2a\sqrt{\frac{b}{a+b}}\right)\\[1em]\text{Y}:&\left(\frac{ab}{a+b},2b\sqrt{\frac{a}{a+b}}\right)\end{align*}

 円\text{R}の半径を1、円\text{P}の半径をaとすると、円\text{Q}の半径は1-aとなります。
すると、上記の各円の方程式、中心、半径はb=1-aを代入して以下のようになります。
\begin{align*}\text{P}:&(x+a)^2+y^2=a^2\\ &中心:\ (-a,0)\quad半径:\ a\\[1em]\text{Q}:&(x-1+a)^2+y^2=(1-a)^2\\ &中心:\ (1-a,0)\quad半径:\ 1-a\\[1em]\text{R}:&(x-1+2a)^2+y^2=1\\ &中心:\ (1-2a,0)\quad半径:\ 1\\[1em]\text{X}:&\bigl\{x+a(1-a)\bigr\}^2+(y-2a\sqrt{1-a})^2=a^2(1-a)^2\\ &中心:\ \bigl(-a(1-a),2a\sqrt{1-a}\bigr)\quad半径:\ a(1-a)\\[1em]\text{Y}:&\bigl\{x-a(1-a)\bigr\}^2+\bigl\{y-2(1-a)\sqrt{a}\bigr\}^2=a^2(1-a)^2\\ &中心:\ \bigl(a(1-a),2(1-a)\sqrt{a}\bigr)\quad半径:\ a(1-a)\end{align*}

リンク:Twin circles - Wikipedia

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