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2023年5月10日

負の数のべき乗が実数となる条件は?

 正の数のべき乗a^xはすべての実数xで実数となります。しかし負の数のべき乗(-a)^x\ (a>0)はすべての実数xで実数となるわけではありません。
負の数のべき乗が実数となる条件は何でしょうか?

xが整数のとき

 x=2n\ (n:\text{整数})、すなわちxが偶数のとき
\begin{align*}(-a)^{2n}&=\left\{(-a)^2\right\}^n\\[0.5em]&=(a^2)^n\\[0.5em]&=a^{2n}\end{align*}
となるので、正の実数となります。
x=0のときはxの偶数のときに含まれますが、aの値に関わらず(-a)^0=1となります。


 x=2n+1\ (n:\text{整数})、すなわちxが奇数のとき
\begin{align*}(-a)^{2n+1}&=(-a)^{2n}\cdot(-a)\\[0.5em]&=\left\{(-a)^2\right\}^n\cdot(-a)\\[0.5em]&=(a^2)^n\cdot(-a)\\[0.5em]&=a^{2n}\cdot(-a)\\[0.5em]&=-a^{2n+1}\end{align*}
となるので、負の実数となります。


xが整数以外の有理数のとき

 x0以外の整数の逆数の場合から考えます。
 x=\dfrac{1}{2n}\ (n:\text{整数})、すなわちxが偶数の逆数のとき
\begin{align*}(-a)^{\frac{1}{2n}}&=a^{\frac{1}{2n}}\cdot(-1)^{\frac{1}{2n}}\end{align*}
ここで、オイラーの公式をもちいて
\begin{align*}a^{\frac{1}{2n}}\cdot(-1)^{\frac{1}{2n}}&=a^{\frac{1}{2n}}\cdot\left\{e^{i(2m+1)\pi}\right\}^{\frac{1}{2n}}&(m:\text{整数})\\[0.5em]&=a^{\frac{1}{2n}}\cdot e^{i\frac{2m+1}{2n}\pi}\end{align*}
となります。複素数の範囲まで広げて考えた結果、任意の整数mが現れたことで複数の複素数を表す状態となっていますが、(-a)^xが実数となる適当なmが存在するとき、(-a)^xは実数であるとします。

ここで、a^{\frac{1}{2n}}は実数なので、e^{i\frac{2m+1}{2n}\pi}に実数となるものがあるかを確認します。
e^{i\frac{2m+1}{2n}\pi}が実数になるためには、指数部分の\dfrac{2m+1}{2n}が整数である必要があります。しかし、これが整数になることはありません。

\dfrac{2m+1}{2n}は分母が偶数、分子が奇数の分数なので、積の偶奇に着目すると
\begin{align*}(偶数)\times(偶数)&=(偶数)\\[1em](偶数)\times(奇数)&=(偶数)\\[1em](奇数)\times(奇数)&=(奇数)\end{align*}
より、分母は(偶数)\times(偶数)、または(偶数)\times(奇数)からなり、分子は(奇数)\times(奇数)からなるということになります。
すると\dfrac{2m+1}{2n}はすでに既約分数で整数にならないか、奇数が共通因数となり約分できる可能性はあっても結局(奇数)/(偶数)の形のままで整数にならないかのどちらかです。

したがって、nに対しどのようにmをとってもe^{i\frac{2m+1}{2n}\pi}が実数とならないので、(-a)^{\frac{1}{2n}}もまた実数となりません。

 また、(-a)^{\frac{1}{2n}}の累乗、すなわち整数kをもちいて
\begin{align*}\left\{(-a)^{\frac{1}{2n}}\right\}^k&=\left\{a^{\frac{1}{2n}}\cdot e^{i\frac{2m+1}{2n}\pi}\right\}^k\\[0.5em]&=a^\frac{k}{2n}\cdot e^{i\frac{k(2m+1)}{2n}\pi}\end{align*}
\dfrac{k(2m+1)}{2n}が整数のとき実数になります。そのときのkの条件は2nの倍数であることですが、それは結局-aの整数乗に他なりません。

したがって、xが分母が偶数の有理数であるとき、(-a)^xが実数となるものは存在しません。


 x=\dfrac{1}{2n+1}\ (n:\text{整数})、すなわちxが奇数の逆数のとき
\begin{align*}(-a)^{\frac{1}{2n+1}}&=a^{\frac{1}{2n+1}}\cdot(-1)^{\frac{1}{2n+1}}\\[0.5em]&=a^{\frac{1}{2n+1}}\cdot\left\{e^{i(2m+1)\pi}\right\}^{\frac{1}{2n+1}}&(m:\text{整数})\\[0.5em]&=a^{\frac{1}{2n+1}}\cdot e^{i\frac{2m+1}{2n+1}\pi}\end{align*}
となります。
ここで、a^{\frac{1}{2n+1}}は実数なので、e^{i\frac{2m+1}{2n+1}\pi}に実数となるものがあるかを確認します。
e^{i\frac{2m+1}{2n+1}\pi}が実数となるためには、指数部分の\dfrac{2m+1}{2n+1}が整数である必要があります。
分母と分子ともに奇数なので上記の積の偶奇の(奇数)\times(奇数)より、分子が分母の奇数倍のとき、約分できかつ整数となります。すなわち整数kをもちいて2m+1=(2k+1)(2n+1)となれば\dfrac{2m+1}{2n+1}=2k+1なので、
e^{i\frac{2m+1}{2n+1}\pi}=e^{i(2k+1)\pi}=-1
です。

したがって、e^{i\frac{2m+1}{2n+1}\pi}が実数となるようなmが存在し、かつe^{i\frac{2m+1}{2n+1}\pi}=-1になるので、(-a)^{\frac{1}{2n+1}}は負の実数となります。

 またこのことから、(-a)^{\frac{1}{2n+1}}の累乗はxが整数の場合と同じ場合分けとなります。
すなわち整数mをもちいて、指数の分子が偶数の(-a)^{\frac{2m}{2n+1}}は正の実数、分子が奇数の(-a)^{\frac{2m+1}{2n+1}}は負の実数となります。

xが分母が奇数の有理数のときの場合分けは、上記の(-a)^{\frac{2m+1}{2n+1}}の指数部分\dfrac{2m+1}{2n+1}が整数となるときを除いたものとなります。

xが整数のときと整数以外の有理数のときでxが任意の有理数の場合を考えることができました。

xが無理数のとき

\begin{align*}(-a)^x&=(-1\cdot a)^x\\[0.5em]&=(-1)^x\cdot a^x\\[0.5em]&=e^{ix(2m+1)\pi}\cdot a^x&(m:\text{整数})\end{align*}
より、a^xは実数であるので、e^{ix(2m+1)\pi}に実数となるものがあれば(-a)^xは実数であるといえます。

xが既約分数の時と同様にe^{ix(2m+1)\pi}の指数部分のうちx(2m+1)が整数のとき、(-a)^xも実数となります。しかし、xは無理数、2m+1は整数なので、x(2m+1)は無理数です。

したがって、xが無理数のときe^{ix(2m+1)\pi}は実数とならないので(-a)^xもまた実数になりません。


 以上をまとめると以下のようになります。

xが有理数のとき

xが整数のとき

xが偶数のとき、(-a)^x正の実数

xが奇数のとき、(-a)^x負の実数

xが整数以外の有理数のとき

xが分母が偶数の有理数のとき、(-a)^x虚数

xが分母が奇数の有理数のとき

└分子が偶数のとき、(-a)^x正の実数

└分子が奇数のとき、(-a)^x負の実数

xが無理数のとき(-a)^x虚数


 y=(-a)^xのグラフを座標平面に描こうとすると線となる部分はなく点のみとなります。この無数にある点を1つ1つ丁寧に打って描き表すのは非常に困難ですが、点がどのあたりに存在しているのかというのは以下のグラフのように示すことはできます。
(-a)^x=e^{ix(2m+1)\pi}\cdot a^x\quad(m:\text{整数})
と書け、xによらず常に\left|e^{ix(2m+1)\pi}\right|=1であることから、\left|(-a)^x\right|=\left|a^x\right|となります。
y=(-a)^xを満たす点が存在する場所
したがって、座標平面上のy=(-a)^xを満たす点はy=a^xまたはy=-a^xのグラフ上に存在することがわかります。

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