素数$p$と$p$未満の任意の自然数$k$について
という性質があります。
\begin{equation}\large kx\equiv1\pmod p\end{equation}
を満たす$p$未満の自然数$x$が必ず存在する
これが成り立つことを確かめてみます。
これは、$p$未満の自然数同士の積の中に$p$で割ったときの余りが$1$になるものが必ず存在することを主張しています。
$p=2$のとき
$p=2$のとき、$p$未満の自然数は$1$だけなので$k=1$。
\[x\equiv1\pmod2\]
を満たす$x=1$が存在することがわかります。
$p>2$のとき
$p>2$のときは、「倍数を互いに素な自然数で割った余りの性質」を利用します。
素数$p$と$p$未満の自然数$k$は互いに素です。
素数$p$と$p$未満の自然数$k$は互いに素です。
したがって、次のことがいえます。
$k$の倍数$k,2k,\cdots,(p-1)k,pk$をそれぞれ$p$で割ったときの余りを一列に並べたものは$0,1,\cdots,p-2,p-1$の並び替えである。
ここで、必ず
これはすなわち、$k$の倍数$k,2k,\cdots,(p-2)k,(p-1)k$の中に必ず1つだけ$p$で割ったときの余りが$1$となるものが含まれているということなので、$(1)$を満たす$p$未満の自然数$x$が必ず1つだけ存在することがわかります。
\[pk\equiv0\pmod p\]
であることに着目すれば
性質1:
$k$の倍数$k,2k,\cdots,(p-2)k,(p-1)k$をそれぞれ$p$で割ったときの余りを一列に並べたものは$1,2,\cdots,p-2,p-1$の並び替えである。
ということがいえます。$k$の倍数$k,2k,\cdots,(p-2)k,(p-1)k$をそれぞれ$p$で割ったときの余りを一列に並べたものは$1,2,\cdots,p-2,p-1$の並び替えである。
これはすなわち、$k$の倍数$k,2k,\cdots,(p-2)k,(p-1)k$の中に必ず1つだけ$p$で割ったときの余りが$1$となるものが含まれているということなので、$(1)$を満たす$p$未満の自然数$x$が必ず1つだけ存在することがわかります。
以上より、冒頭の性質
性質2:
素数$p$と$p$未満の任意の自然数$k$について
という性質があることがわかります。
素数$p$と$p$未満の任意の自然数$k$について
\[\large kx\equiv1\pmod p\]
を満たす$p$未満の自然数$x$が必ず存在する
次は、$(1)$を満たす2つの因数の組み合わせについて調べてみます。
相異なる$p$未満の自然数$a,b$の積$ab$は$a$の倍数かつ$b$の倍数であるといえます。
$(1)$に$kx=ab$を代入して
$(1)$に$kx=ab$を代入して
\[ab\equiv1\pmod p\]
が成り立つとき、$kx$に代入して$(1)$を満たす$a$の倍数は$ab$以外になく、同様に$(1)$を満たす$b$の倍数もまた$ab$しかないということが性質1よりいえます。
したがって、以下のことがいえます。
性質3:
$(1)$を満たす因数の組み合わせの中に$(a,b)$以外に$a,b$を含む組み合わせが存在しない。
$(1)$を満たす因数の組み合わせの中に$(a,b)$以外に$a,b$を含む組み合わせが存在しない。
ところで、$(1)$を満たす因数の組み合わせの中で$p$によらず変わらないものが存在します。
それは、$1$または$p-1$を含む組み合わせです。
$1$を含む組み合わせ
もう一方の因数を$x$とします。
\[1\equiv1\pmod p\]
なので、
\[x\equiv1\pmod p\]
を満たすものとして自明なのは$x=1$であり、性質3より唯一の$x$の値となります。
したがって、$1$を含む組み合わせは必ず$(1,1)$となります。
$p-1$を含む組み合わせ
もう一方の因数を$y$とします。
\[p-1\equiv-1\pmod p\]
より、
\[(p-1)y\equiv1\pmod p\]
を満たすものには$y=p-1$があり、性質3より唯一の$y$の値となります。
したがって、$p-1$を含む組み合わせは必ず$(p-1,p-1)$となります。
他に自身しか含まない組み合わせが存在するかを調べてみると、
$(1)$に$x=k$を代入すると、$\mod p$において
となり、自身しか含まない組み合わせは$(1,1),(p-1,p-1)$の2つしかないことがわかります。
\begin{align*}k^2\equiv1\\[0.5em]k^2-1\equiv0\\[0.5em](k+1)(k-1)\equiv0\\[0.5em]k\equiv\pm1\equiv1,p-1\end{align*}
他の組み合わせ
$2,3,\cdots,p-3,p-2$を含む組み合わせは、$(1,1),(p-1,p-1)$が存在することと性質3より$1,p-1$を含みません。
そして、$2,3,\cdots,p-3,p-2$を含む組み合わせは性質2と性質3より$2,3,\cdots,p-3,p-2$の中から2個ずつ取り出してつくることになります。
そして、$2,3,\cdots,p-3,p-2$を含む組み合わせは性質2と性質3より$2,3,\cdots,p-3,p-2$の中から2個ずつ取り出してつくることになります。
$p>2$ならば素数$p$は奇数なので、$p$未満の自然数$1,2,\cdots,p-2,p-1$の数は偶数、$1,p-1$を除いた$2,3,\cdots,p-3,p-2$の数も偶数なので、過不足なくすべての自然数を使って組み合わせをつくることができます。
できる組み合わせの数は、$2,3,\cdots,p-3,p-2$の個数$p-3$個の半分の$\dfrac{p-3}{2}$個です。
したがって、$kx$に代入して$(1)$を満たすことができる$p$未満の自然数による因数の組み合わせの数は全部で$\dfrac{p+1}{2}$個となります。
例えば、$p=31$のとき$(1)$を満たす組み合わせは$1$から$30$までの自然数をすべて使って以下の16個ができます。
\begin{align*}\pmod{31}\\
(1,1)&&1\cdot1&=1\\[0.5em](2,16)&&2\cdot16&=32=31+1\\[0.5em](3,21)&&3\cdot21&=63=31\cdot2+1\\[0.5em](4,8)&&4\cdot8&=32=31+1\\[0.5em](5,25)&&5\cdot25&=125=31\cdot4+1\\[0.5em](6,26)&&6\cdot26&=156=31\cdot5+1\\[0.5em](7,9)&&7\cdot9&=63=31\cdot2+1\\[0.5em](10,28)&&10\cdot28&=280=31\cdot9+1\\[0.5em](11,17)&&11\cdot17&=187=31\cdot6+1\\[0.5em](12,13)&&12\cdot13&=156=31\cdot5+1\\[0.5em](14,20)&&14\cdot20&=280=31\cdot9+1\\[0.5em](15,29)&&15\cdot29&=435=31\cdot14+1\\[0.5em](18,19)&&18\cdot19&=342=31\cdot11+1\\[0.5em](22,24)&&22\cdot24&=528=31\cdot17+1\\[0.5em](23,27)&&23\cdot27&=621=31\cdot20+1\\[0.5em](30,30)&&30\cdot30&=900=31\cdot29+1\end{align*}
Share: