2次方程式は因数分解を利用して解くことができます。
2次方程式の右辺を$0$、すなわち$ax^2+bx+c=0$($a,b,c:$定数、$a\neq0$)という形にしてから$a(x-p)(x-q)=0$($p,q:$定数)という形に因数分解できたとき、積の性質から2次方程式の解を求めることができます。
積が$0$になる条件は、少なくとも1つの因数が$0$であることです。
$a$は$0$でないので$a(x-p)(x-q)=0$が成り立つ条件は
の2通りとなります。
$a$は$0$でないので$a(x-p)(x-q)=0$が成り立つ条件は
- $x-p=0$かつ$x-q=0$
- $x-p=0$または$x-q=0$
それぞれの場合における2次方程式$a(x-p)(x-q)=0$の解は以下のようになります。
1. $x-p=0$かつ$x-q=0$
これは$x-p$と$x-q$が同時に$0$となるような$x$の値の場合、すなわち$p=q$のときなので因数分解後の2次方程式は$a(x-p)^2=0$という形になります。
このときの2次方程式の解は
\[x=p\]
ただ1つとなります。この解のことを重解といいます。
2. $x-p=0$または$x-q=0$
これは$x-p$か$x-q$のどちらかが$0$となるような$x$の値の場合です。
$x=p$のとき$x-p=0$に、$x=q$のとき$x-q=0$になるので、このときの2次方程式の解は
\[x=pまたはx=q\]
別の書き方で
\[x=p,q\]
となります。
ちなみに、なぜ右辺を$0$にするのかというと上記の2通りの場合に限定できるからです。
例えば、右辺を$2$にすると積が$2$になる条件を考えることになります。
積が$2$になる因数の組を$(x-p,x-q)$と表すことにすると、整数の範囲では$(-2,-1),(-1,-2),(1,2),(2,1)$の4通りが存在します。しかし、実際には因数の組は整数の範囲と限定されていないので$\left(\dfrac{1}{2},4\right)$や$\left(\sqrt{2},\sqrt{2}\right)$のような有理数、無理数の組が無数に存在します。
積が$2$になる因数の組を$(x-p,x-q)$と表すことにすると、整数の範囲では$(-2,-1),(-1,-2),(1,2),(2,1)$の4通りが存在します。しかし、実際には因数の組は整数の範囲と限定されていないので$\left(\dfrac{1}{2},4\right)$や$\left(\sqrt{2},\sqrt{2}\right)$のような有理数、無理数の組が無数に存在します。
これら無数の因数の組の中で2つの因数の差$(x-p)-(x-q)=q-p$を満たすものが2次方程式の解となるのですが、それを探すのは困難で、積の条件が限定されている$0$のほうが簡単に解を見つけることができます。
例として2次方程式$2x^2+2x-12=0$を因数分解を利用して解いてみます。
左辺を因数分解すると
\begin{align*}2x^2+2x-12&=0\\[0.5em]2(x^2+x-6)&=0\\[0.5em]2(x+2)(x-3)&=0\end{align*}
となります。
これは2.の場合に当てはまるので、この2次方程式の解は$x=-2,3$となります。
この2次方程式の解き方は因数分解が容易な場合でないと使えない方法のように思われますが、平方完成と組み合わせてもちいるとどのような2次方程式でもこの方法で解くことができます。
例として2次方程式$3x^2-7x+3=0$を解いてみます。
両辺を$x^2$の係数で割ってから左辺を平方完成すると
\begin{align*}3x^2-7x+3&=0\\[0.5em]x^2-\frac{7}{3}x+1&=0\\[0.5em]\left[\left\{x^2-\frac{7}{3}x+\left(-\frac{7}{6}\right)^2\right\}-\left(-\frac{7}{6}\right)^2\right]+1&=0\\[0.5em]\left\{x^2-\frac{7}{3}x+\left(-\frac{7}{6}\right)^2\right\}-\frac{49}{36}+1&=0\\[0.5em]\left\{x^2-\frac{7}{3}x+\left(-\frac{7}{6}\right)^2\right\}-\frac{13}{36}&=0\\[0.5em]\left(x-\frac{7}{6}\right)^2-\frac{13}{36}&=0\end{align*}
定数項をその平方根の2乗の形に変形し、因数分解公式$x^2-a^2=(x+a)(x-a)$を利用すると
\begin{align*}\left(x-\frac{7}{6}\right)^2-\left(\frac{\sqrt{13}}{6}\right)^2&=0\\[0.5em]\left\{\left(x-\frac{7}{6}\right)+\frac{\sqrt{13}}{6}\right\}\left\{\left(x-\frac{7}{6}\right)-\frac{\sqrt{13}}{6}\right\}&=0\\[0.5em]\left(x-\frac{7-\sqrt{13}}{6}\right)\left(x-\frac{7+\sqrt{13}}{6}\right)&=0\\[0.5em]x=\frac{7-\sqrt{13}}{6},\frac{7+\sqrt{13}}{6}\\[0.5em]\left(x=\frac{7\pm\sqrt{13}}{6}\right)\end{align*}
となり、解くことができます。
任意の2次方程式$ax^2+bx+c=0$($a,b,c:$定数、$a\neq0$)をこの方法で解くと
\begin{align*}ax^2+bx+c&=0\\[0.5em]x^2+\frac{b}{a}x+\frac{c}{a}&=0\\[0.5em]\left(x^2+\frac{b}{a}x\right)+\frac{c}{a}&=0\\[0.5em]\left[\left\{x^2+\frac{b}{a}x+\left(\frac{b}{2a}\right)^2\right\}-\left(\frac{b}{2a}\right)^2\right]+\frac{c}{a}&=0\\[0.5em]\left\{\left(x^2+\frac{b}{a}x+\frac{b^2}{4a^2}\right)-\frac{b^2}{4a^2}\right\}+\frac{c}{a}&=0\\[0.5em]\left(x^2+\frac{b}{a}x+\frac{b^2}{4a^2}\right)-\frac{b^2}{4a^2}+\frac{c}{a}&=0\\[0.5em]\left(x^2+\frac{b}{a}x+\frac{b^2}{4a^2}\right)-\frac{b^2-4ac}{4a^2}&=0\\[0.5em]\left(x+\frac{b}{2a}\right)^2-\frac{b^2-4ac}{4a^2}&=0\\[0.5em]\left(x+\frac{b}{2a}\right)^2-\left(\frac{\sqrt{b^2-4ac}}{2a}\right)^2&=0\\[0.5em]\left\{\left(x+\frac{b}{2a}\right)+\left(\frac{\sqrt{b^2-4ac}}{2a}\right)\right\}\left\{\left(x+\frac{b}{2a}\right)-\left(\frac{\sqrt{b^2-4ac}}{2a}\right)\right\}&=0\\[0.5em]\left(x+\frac{b+\sqrt{b^2-4ac}}{2a}\right)\left(x+\frac{b-\sqrt{b^2-4ac}}{2a}\right)&=0\\[0.5em]\left(x-\frac{-b-\sqrt{b^2-4ac}}{2a}\right)\left(x-\frac{-b+\sqrt{b^2-4ac}}{2a}\right)&=0\\[0.5em]x=\frac{-b-\sqrt{b^2-4ac}}{2a},\frac{-b+\sqrt{b^2-4ac}}{2a}\\[0.5em]\left(x=\frac{-b\pm\sqrt{b^2-4ac}}{2a}\right)\end{align*}
となり、これが2次方程式の解の公式となります。
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