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2025年5月26日

x^2の係数が1以外のxの2次式の因数分解(たすき掛け)

 $x^2$の係数が$1$以外の$x$の2次式
\[\large px^2+qx+r\quad(p,q,r:実数;p\neq1)\]
はどのようにして$x$の1次式同士の掛け算の形まで因数分解すればよいでしょうか?

たすき掛け

 まずは、主に整数係数の範囲で因数分解するときの因数分解公式
\[acx^2+(ad+bc)x +bd=(ax+b)(cx+d)\quad(a,b,c,d:定数;a,c\neq0)\]
を利用した因数分解、たすき掛けによる因数分解を紹介します。
$px^2+qx+r=acx^2+(ad+bc)x +bd$とすると、係数と定数項には
\begin{cases}p=ac\\[1em]q=ad+bc\\[1em]r=bd\end{cases}
という関係があることがわかるので、この連立方程式から$a,b,c,d$を求め、因数分解後の式を導き出します。
$p$を因数分解して、掛けて$p$となる因数の組をいくつかつくり、$(a, c)$の候補とします。同様に$r$を因数分解して掛けて$r$となる因数の組をつくって$(b, d)$の候補とします。
これらの因数の組を組み合わせて、連立方程式の解$a,b,c,d$を求めます。
たすき掛け
$(a, c),(b, d)$の候補を上図のように配置し、対角線上の数を掛け合わせます。これがたすき掛けです。
たすき掛けの積の和は2次式の$x$の係数$ad+bc$、そしてそれに等しい$q$に対応しており、もし連立方程式の解として適した候補を選んでいれば、積の和は2次式の$x$の項$q$に等しくなります。
このとき、連立されたすべての方程式を同時に満たす解を見つけたことになります。

 例として、2次式$6x^2-9x-15$を因数分解してみます。
まずは、各項に共通因数$3$があるので、$3$を括りだして
\[6x^2-9x-15=3(2x^2-3x-5)\]
のようにより簡単な形の2次式をつくります。$x^2$の係数が負の数のときは、括りだした後にできる2次式の$x^2$の係数が正となるように共通因数を括りだすようにします。
$3$を括りだした後の2次式$2x^2-3x-5$について、$2x^2-3x-5=acx^2+(ad+bc)x +bd$とすると、係数と定数項には
\begin{cases}2=ac&\cdots(1)\\[1em]-3=ad+bc&\cdots(2)\\[1em]-5=bd&\cdots(3)\end{cases}
という関係があることがわかります。
$(1)$の掛けて$2$になる整数の組について考えてみます。このとき、負の数同士の組は考えず、左右を入れ替えた整数の組は同じものとします。
すると、
\[(1,2)\]
のただ1組があることがわかります。これは連立方程式の解の一部$(a, c)$の候補となります。
次に、$(3)$の掛けて$-5$になる整数の組について考えてみます。こちらは$(1)$のときとは反対に、負の数同士の組を含め、左右を入れ替えた整数の組は別のものとして区別します。
すると、
\begin{array}{l}(-5,1),&(-1,5),\\[0.5em](1,-5),&(5,-1)\end{array}
の4組があることがわかります。これらは連立方程式の解の一部$(b, d)$の候補となります。
たすき掛けで当てはめる$(a, c)$の候補は$(1,2)$ただ1つなので、$(b, d)$の候補を1つずつ当てはめて検証していきます。
2x^2-3x-5のたすき掛けによる因数分解 (a,c)=(1,2),(b,d)=(-5,1)の場合
$(b, d)=(-5,1)$であると仮定してたすき掛けをすると、積の和は$-9$となります。
2次式の$x$の係数は$-3$なので、$(b, d)=(-5,1)$は連立方程式の解の一部ではないことがわかります。
2x^2-3x-5のたすき掛けによる因数分解 (a,c)=(1,2),(b,d)=(-1,5)の場合
$(b, d)=(-1,5)$であると仮定してたすき掛けをすると、積の和は$3$となります。
したがって、$(b, d)=(-1,5)$は連立方程式の解の一部ではないことがわかります。
2x^2-3x-5のたすき掛けによる因数分解 (a,c)=(1,2),(b,d)=(1,-5)の場合
$(b, d)=(1,-5)$であると仮定してたすき掛けをすると、積の和は$-3$となります。
したがって、$(b, d)=(1,-5)$が連立方程式の解の一部、すなわち$(a, b, c, d)=(1,1,2,-5)$が連立方程式の解であり、
\[6x^2-9x-15=3(2x^2-3x-5)=3(x+1)(2x-5)\]
と因数分解できることがわかります。
2x^2-3x-5のたすき掛けによる因数分解 (a,c)=(1,2),(b,d)=(5,-1)の場合
一応、$(b, d)=(5,-1)$もたすき掛けをしてみると積の和は$9$となり、連立方程式の解の一部ではないことがわかります。

 上記のような条件で$(a, c),(b, d)$の候補を考えたのは、連立方程式の解を1つに絞り込みたかったからです。

もし、$(a, c)$の候補である掛けて$p$となるような整数の組に$(α,γ)$があったとすると、$p=αγ$であるため、候補となるための制限がなければ$(γ,α),(-α,-γ),(-γ,-α)$も候補に含まれることになります。

そして、$(b, d)$の候補である掛けて$r$となるような整数の組に$(β,δ)$があったとすると、同様に$(δ,β),(-β,-δ),(-δ,-β)$も含まれています。

すると、たすき掛けをしたとき$(α,γ)$と$(β,δ)$、$(γ,α)$と$(δ,β)$、$(-α,-γ)$と$(-β,-δ)$、$(-γ,-α)$と$(-δ,-β)$の組み合わせはすべて同じ積の和$αδ+βγ$となります。
すなわち、$(a, b, c, d)=(α,β,γ,δ)$が連立方程式の解であったならば、$(a, b, c, d)=(γ,δ,α,β),(-α,-β,-γ,-δ),(-γ,-δ,-α,-β)$もまた解であり、計4個の解があることになります。

そこで、左右の数を入れ替えた候補と符号が反転している候補を消して、連立方程式の解をただ1つにします。
ただし、$(a, c),(b, d)$両方の候補からは消しません。

例えば、入れ替えただけの候補を消す場合を考えます。
$(a, c)$の候補からは$(α,γ),(-α,-γ)$をそれぞれ入れ替えた$(γ,α),(-γ,-α)$を消し、$(b, d)$の候補から$(β,δ),(-β,-δ)$をそれぞれ入れ替えた$(δ,β),(-δ,-β)$を消すことができれば、連立方程式の解からも入れ替えただけの解が消えて2個になります。

しかし、これは適切に候補を消した場合であり、$(b, d)$の候補から$(δ,β),(-δ,-β)$をそれぞれ入れ替えた$(β,δ),(-β,-δ)$を消してしまうと、たすき掛けの積の和が$αγ+βδ$となる組み合わせがなくなってしまい、連立方程式は解けなくなってしまいます。

不用意に候補を絞り連立方程式を解けなくしてしまうことを防ぐためには、$(a, c),(b, d)$どちらかの候補だけを絞るのが有効です。
連立方程式の解の個数を減らすということは、適切な$(a, c),(b, d)$の候補の組み合わせを減らせばよく、それは$(a, c),(b, d)$どちらかの候補だけを絞るだけで実現できるからです。
符号が反転している候補も、同様で$(a, c),(b, d)$どちらかの候補のものだけを消します。
どちらの候補を絞るのかについては、$(a, c)$の候補のほうが適切です。なぜなら、因数分解後の1次式の$x$の係数である$a,c$を正の数に限定したいからです。
これは、因数分解する際のルールではなく、因数分解後の式の形を整えることを目的としたものです。
また、たすき掛けの前に2次式の$x^2$の係数が正の数となるように共通因数を括りだしていたのも、$a,c$を正の数に限定するための準備でした。
そうすることで$(a, c)$の候補に必ず負の整数同士の組が含まれることになり、これを符号が反転している候補として消すことで$(a, c)$の候補を正の整数同士の組に限定できます。

たすき掛けで因数分解できないものは以下の方法で因数分解します。

それ以外の方法

 どの$x$の2次式も$x^2$の係数を共通因数として括りだせば$x^2$の係数が$1$の$x$の2次式をつくることができることを利用して因数分解します。
$x$の2次式$px^2+qx+r$について、$q=p\cdot\dfrac{q}{p},r=p\cdot\dfrac{r}{p}$であることから
\[px^2+qx+r=p\left(x^2+\frac{q}{p}x+\frac{r}{p}\right)\]
と書くことができます。
$x^2+\dfrac{q}{p}x+\dfrac{r}{p}$の部分を「$x^2$の係数が$1$の$x$の2次式の因数分解」を利用して因数分解すれば、2次式$px^2+qx+r$を
\[px^2+qx+r=p(x+\alpha)(x+\beta)\]
という形に因数分解することができます。

 ただし、どのような係数の範囲で因数分解することを求められているかに注意して、適切に$p$を因数分解し、その因数を$x+α,x+β$それぞれに掛ける必要があります。

例えば、2次式$4x^2-4x-3$を整数係数の範囲で因数分解する場合を考えます。
$x^2$の係数$4$で括りだして
\[4x^2-4x-3=4\left(x^2-x-\frac{3}{4}\right)\]
とし、$x^2-x-\dfrac{3}{4}$を因数分解すると
\begin{align*}x^2-x-\frac{3}{4}&=\left(x-\frac{1}{2}\right)^2-1\\[0.5em]&=\left(x-\frac{1}{2}\right)^2-1^2\\[0.5em]&=\left\{\left(x-\frac{1}{2}\right)+1\right\}\left\{\left(x-\frac{1}{2}\right)-1\right\}\\[0.5em]&=\left(x+\frac{1}{2}\right)\left(x-\frac{3}{2}\right)\end{align*}
となるので、
\[4x^2-4x-3=4\left(x+\frac{1}{2}\right)\left(x-\frac{3}{2}\right)\]
と因数分解されます。
しかし、$\dfrac{1}{2}$や$-\dfrac{3}{2}$が含まれていては整数係数の範囲で因数分解したことにはならないので、最初に括りだした$4$の因数を$x+\dfrac{1}{2}$と$x-\dfrac{3}{2}$それぞれに掛けます。
$x+\dfrac{1}{2}$と$x-\dfrac{3}{2}$はともに$2$を掛ければ整数係数の1次式となり、$4$を因数分解すると$2^2$となるので、
\begin{align*}4\left(x+\frac{1}{2}\right)\left(x-\frac{3}{2}\right)&=2^2\left(x+\frac{1}{2}\right)\left(x-\frac{3}{2}\right)\\[0.5em]&=\left\{2\left(x+\frac{1}{2}\right)\right\}\left\{2\left(x-\frac{3}{2}\right)\right\}\\[0.5em]\large\therefore 4x^2-4x-3&\large=(2x+1)(2x-3)\end{align*}
とすることで整数係数の範囲で因数分解した形になります。

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