三角関数の合成の公式を平面座標を利用して導いてみます。
その1
原点Oから点(a,b)までの距離をr、x軸の正の部分と原点Oと点(a,b)を結ぶ線分の反時計回りになす角をαとおくと
r=√a2+b2{cosα=a√a2+b2sinα=b√a2+b2
が成り立ち、また点(a,b)について
(a,b)=(rcosθ,rsinθ)
が成り立ちます。
2点(a,b),(cosθ,sinθ)間の距離をlとすると、その2乗は
l2=(a−cosθ)2+(b−sinθ)2=a2−2acosθ+cos2θ+b2−2bsinθ+sin2θ=(a2+b2)+(sin2θ+cos2θ)−2(acosθ+bsinθ)=r2+1−2(acosθ+bsinθ)(∵sin2x+cos2x=1r=√a2+b2)
となります。
次に平面上の2点(rcos(α−θ),rsin(α−θ)),(1,0)を考えます。
(a,b)=(rcosα,rsinα),(1,0)=(cos0°,sin0°)であることより、これらの点はそれぞれ(a,b),(cosθ,sinθ)を原点を中心に時計回りにθだけ回転させたものであるため、この2点間の距離もlとなります。
(a,b)=(rcosα,rsinα),(1,0)=(cos0°,sin0°)であることより、これらの点はそれぞれ(a,b),(cosθ,sinθ)を原点を中心に時計回りにθだけ回転させたものであるため、この2点間の距離もlとなります。
これら2点の座標をもちいてl2を表すと
l2={rcos(α−θ)−1}2+{rsin(α−θ)−0}2=r2cos2(α−θ)−2rcos(α−θ)+1+r2sin2(α−θ)={r2sin2(α−θ)+r2cos2(α−θ)}+1−2rcos(α−θ)=r2{sin2(α−θ)+cos2(α−θ)}+1−2rcos(α−θ)=r2+1−2rcos(α−θ)(∵sin2x+cos2x=1)
となります。
(a),(b)より
r2+1−2(acosθ+bsinθ)=r2+1−2rcos(α−θ)∴acosθ+bsinθ=rcos(α−θ)
となります。
したがって、三角関数の和acosθ+bsinθは
r=√a2+b2{cosα=a√a2+b2sinα=b√a2+b2
を満たす実数r,αをもちいて
acosθ+bsinθ=rcos(α−θ)
と表せることがわかります。
その2
その1と同様、
r=√a2+b2{cosα=a√a2+b2sinα=b√a2+b2
を満たすr,αによって点(a,b)を
(a,b)=(rcosθ,rsinθ)
と表すことができます。
2点(a,b),(cos(−θ),sin(−θ))間の距離をlとすると、その2乗は
l2={a−cos(−θ)}2+{b−sin(−θ)}2=a2−2acos(−θ)+cos2(−θ)+b2−2bsin(−θ)+sin2(−θ)=(a2+b2)+{sin2(−θ)+cos2(−θ)}−2{acos(−θ)+bsin(−θ)}=r2+1−2{acos(−θ)+bsin(−θ)}(∵sin2x+cos2x=1r=√a2+b2)
となり、三角関数の性質sin(−x)=−sinx,cos(−x)=cosxより
l2=r2+1−2{acosθ+b(−sinθ)}=r2+1−2(acosθ−bsinθ)
となります。
次に平面上の2点(rcos(α+θ),rsin(α+θ)),(1,0)を考えます。
(a,b)=(rcosα,rsinα),(1,0)=(cos0°,sin0°)であることより、これらの点はそれぞれ(a,b),(cosθ,sinθ)を原点を中心に反時計回りにθだけ回転させたものであるため、この2点間の距離もlとなります。
(a,b)=(rcosα,rsinα),(1,0)=(cos0°,sin0°)であることより、これらの点はそれぞれ(a,b),(cosθ,sinθ)を原点を中心に反時計回りにθだけ回転させたものであるため、この2点間の距離もlとなります。
これら2点の座標をもちいてl2を表すと
l2={rcos(α+θ)−1}2+{rsin(α+θ)−0}2=r2cos2(α+θ)−2rcos(α+θ)+1+r2sin2(α+θ)={r2sin2(α+θ)+r2cos2(α+θ)}+1−2rcos(α+θ)=r2{sin2(α+θ)+cos2(α+θ)}+1−2rcos(α+θ)=r2+1−2rcos(α+θ)(∵sin2x+cos2x=1)
となります。
(c),(d)より
r2+1−2(acosθ−bsinθ)=r2+1−2rcos(α+θ)∴acosθ−bsinθ=rcos(α+θ)
となります。
したがって、三角関数の差acosθ−bsinθは
r=√a2+b2{cosα=a√a2+b2sinα=b√a2+b2
を満たす実数r,αをもちいて
acosθ−bsinθ=rcos(α+θ)
と表せることがわかります。
(1),(2)をまとめると
となります。
acosθ±bsinθ=rcos(α∓θ)
実数r,αは
r=√a2+b2{cosα=a√a2+b2sinα=b√a2+b2
を満たす。
その3
すると、その1と同様にすると
r=√a2+b2{cosα=b√a2+b2sinα=a√a2+b2
を満たすr,αによって点(a,b)を
(a,b)=(rcosθ,rsinθ)
と表すことができます。
2点(b,a),(cos(θ−90°),sin(θ−90°))間の距離をlの2乗は
l2=r2+1−2{bcos(θ−90°)+asin(θ−90°)}
となります。
ここで、
sin(θ−90°)=sin{−(90°−θ)}cos(θ−90°)=cos{−(90°−θ)}
であり、三角関数の性質sin(−x)=−sinx,cos(−x)=cosxより
sin(θ−90°)=−sin(90°−θ)cos(θ−90°)=cos(90°−θ)
三角関数の性質sin(90°−x)=cosx,cos(90°−x)=sinxより
sin(θ−90°)=−cosθcos(θ−90°)=sinθ
となります。
したがって、l2は
l2=r2+1−2{bsinθ+a(−cosθ)}=r2+1−2(bsinθ−acosθ)
となります。
次に平面上の2点(rcos{90°+(α−θ)},rsin{90°+(α−θ)}),(1,0)を考えます。
(b,a)=(rcosα,rsinα),(1,0)=(cos0°,sin0°),90°+(α−θ)=α−(θ−90°)であることより、これらの点はそれぞれ(b,a),(cosθ,sinθ)を原点を中心に時計回りにθ−90°だけ回転させたものであるため、この2点間の距離もlとなります。
(b,a)=(rcosα,rsinα),(1,0)=(cos0°,sin0°),90°+(α−θ)=α−(θ−90°)であることより、これらの点はそれぞれ(b,a),(cosθ,sinθ)を原点を中心に時計回りにθ−90°だけ回転させたものであるため、この2点間の距離もlとなります。
これら2点の座標をもちいてl2を表すと
l2=[rcos{90°+(α−θ)}−1}2+[rsin{90°+(α−θ)}−0]2=r2cos2{90°+(α−θ)}−2rcos{90°+(α−θ)}+1+r2sin2{90°+(α−θ)}=[r2sin2{90°+(α−θ)}+r2cos2{90°+(α−θ)}]+1−2rcos{90°+(α−θ)}=r2[sin2{90°+(α−θ)}+cos2{90°+(α−θ)}]+1−2rcos{90°+(α−θ)}=r2+1−2rcos{90°+(α−θ)}(∵sin2x+cos2x=1)
となります。
(e),(f)より
r2+1−2(bsinθ−acosθ)=r2+1−2rcos{90°+(α−θ)}∴bsinθ−acosθ=rcos{90°+(α−θ)}acosθ−bsinθ=−rcos{90°+(α−θ)}
となり、さらに三角関数の性質cos(90°+x)=−sinxより
acosθ−bsinθ=−r{−sin(α−θ)}=rsin(α−θ)
となります。
したがって、三角関数の差acosθ−bsinθは
r=√a2+b2{cosα=b√a2+b2sinα=a√a2+b2
を満たす実数r,αをもちいて
acosθ−bsinθ=rsin(α−θ)
と表せることがわかります。
その4
これはその1と比較するとa,bを入れ替え、θを90°−θに置き換えたものとなります。
すると、その1と同様にすると
r=√a2+b2{cosα=b√a2+b2sinα=a√a2+b2
を満たすr,αによって点(a,b)を
(a,b)=(rcosθ,rsinθ)
と表すことができます。
2点(b,a),(cos(90°−θ),sin(90°−θ))間の距離をlの2乗は
l2=r2+1−2{bcos(90°−θ)−asin(90°−θ)}
となります。
さらに、三角関数の性質sin(90°−x)=cosx,cos(90°−x)=sinxより
l2=r2+1−2(bsinθ+acosθ)=r2+1−2(acosθ+bsinθ)
となります。
次に平面上の2点(rcos{(α+θ)−90°},rsin{(α+θ)−90°}),(1,0)を考えます。
(b,a)=(rcosα,rsinα),(1,0)=(cos0°,sin0°),(α+θ)−90°=α−(90°−θ)であることより、これらの点はそれぞれ(b,a),(cosθ,sinθ)を原点を中心に時計回りに90°−θだけ回転させたものであるため、この2点間の距離もlとなります。
(b,a)=(rcosα,rsinα),(1,0)=(cos0°,sin0°),(α+θ)−90°=α−(90°−θ)であることより、これらの点はそれぞれ(b,a),(cosθ,sinθ)を原点を中心に時計回りに90°−θだけ回転させたものであるため、この2点間の距離もlとなります。
これら2点の座標をもちいてl2を表すと
l2=[rcos{(α+θ)−90°}−1}2+[rsin{(α+θ)−90°}−0]2=r2cos2{(α+θ)−90°}−2rcos{(α+θ)−90°}+1+r2sin2{(α+θ)−90°}=[r2sin2{(α+θ)−90°}+r2cos2{(α+θ)−90°}]+1−2rcos{(α+θ)−90°}=r2[sin2{(α+θ)−90°}+cos2{(α+θ)−90°}]+1−2rcos{(α+θ)−90°}=r2+1−2rcos{(α+θ)−90°}(∵sin2x+cos2x=1)
となります。
(g),(h)より
r2+1−2(acosθ+bsinθ)=r2+1−2rcos{(α+θ)−90°}∴acosθ+bsinθ=rcos{(α+θ)−90°}
となり、さらにcos(x−90°)=sinxより
acosθ+bsinθ=rsin(α+θ)
が得られます。
したがって、三角関数の和acosθ+bsinθは
r=√a2+b2{cosα=b√a2+b2sinα=a√a2+b2
を満たす実数r,αをもちいて
acosθ+bsinθ=rsin(α+θ)
と表せることがわかります。
(3),(4)をまとめると
となります。
acosθ±bsinθ=rsin(α±θ)
実数r,αは
r=√a2+b2{cosα=b√a2+b2sinα=a√a2+b2
を満たす。
(1)~(4)の変形
得られた(1)~(4)の式の左辺がbsinθ+acosθまたはbsinθ−acosθとなるよう、右辺の角度がθ+αまたはθ−αとなるように変形してみます。
(1)
acosθ+bsinθ=rcos(α−θ)bsinθ+acosθ=rcos{−(θ−α)}
三角関数の性質cos(−x)=cosxより
bsinθ+acosθ=rcos(θ−α)
(2)
acosθ−bsinθ=rcos(α+θ)−(bsinθ−acosθ)=rcos(θ+α)∴bsinθ−acosθ=−rcos(θ+α)
(3)
acosθ−bsinθ=rsin(α−θ)−(bsinθ−acosθ)=rsin{−(θ−α)}bsinθ−acosθ=−rsin{−(θ−α)}
三角関数の性質sin(−x)=−sinxより
bsinθ−acosθ=−r{−sin(θ−α)}∴bsinθ−acosθ=rsin(θ−α)
(4)
acosθ+bsinθ=rsin(α+θ)∴bsinθ+acosθ=rsin(θ+α)
(1)′,(2)′をまとめると
(3)′,(4)′をまとめると
となります。これらはa,bが入れ替わっているだけで「三角関数の合成 sinやcosの係数をどうするか?」で紹介している公式と全く同じものになることがわかります。
bsinθ±acosθ=±rcos(θ∓α)
実数r,αは
r=√a2+b2{cosα=a√a2+b2sinα=b√a2+b2
を満たす。
bsinθ±acosθ=rsin(θ±α)
実数r,αは
r=√a2+b2{cosα=b√a2+b2sinα=a√a2+b2
を満たす。
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