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2024年5月3日

平面座標から三角関数の合成の公式を導く

 三角関数の合成の公式を平面座標を利用して導いてみます。


その1

(a,b)=(rcosα,rsinα)と(cosθ,sinθ)
 平面上の2点(a,b),(cosθ,sinθ)(a,b),(cosθ,sinθ)を考えます。
原点Oから点(a,b)までの距離をr、x軸の正の部分と原点Oと点(a,b)を結ぶ線分の反時計回りになす角をαとおくと
r=a2+b2{cosα=aa2+b2sinα=ba2+b2
が成り立ち、また点(a,b)について
(a,b)=(rcosθ,rsinθ)
が成り立ちます。
2点(a,b),(cosθ,sinθ)間の距離をlとすると、その2乗は
l2=(acosθ)2+(bsinθ)2=a22acosθ+cos2θ+b22bsinθ+sin2θ=(a2+b2)+(sin2θ+cos2θ)2(acosθ+bsinθ)=r2+12(acosθ+bsinθ)(sin2x+cos2x=1r=a2+b2)
となります。
(rcos(α-θ),rsin(α-θ))と(1,0)
 次に平面上の2点(rcos(αθ),rsin(αθ)),(1,0)を考えます。
(a,b)=(rcosα,rsinα),(1,0)=(cos0°,sin0°)であることより、これらの点はそれぞれ(a,b),(cosθ,sinθ)を原点を中心に時計回りにθだけ回転させたものであるため、この2点間の距離もlとなります。
これら2点の座標をもちいてl2を表すと
l2={rcos(αθ)1}2+{rsin(αθ)0}2=r2cos2(αθ)2rcos(αθ)+1+r2sin2(αθ)={r2sin2(αθ)+r2cos2(αθ)}+12rcos(αθ)=r2{sin2(αθ)+cos2(αθ)}+12rcos(αθ)=r2+12rcos(αθ)(sin2x+cos2x=1)
となります。
(a),(b)より
r2+12(acosθ+bsinθ)=r2+12rcos(αθ)acosθ+bsinθ=rcos(αθ)
となります。
したがって、三角関数の和acosθ+bsinθ
r=a2+b2{cosα=aa2+b2sinα=ba2+b2
を満たす実数r,αをもちいて
acosθ+bsinθ=rcos(αθ)
と表せることがわかります。

その2

(a,b)=(rcosα,rsinα)と(cos(-θ),sin(-θ))
 平面上の2点(a,b),(cos(θ),sin(θ))を考えます。
その1と同様、
r=a2+b2{cosα=aa2+b2sinα=ba2+b2
を満たすr,αによって点(a,b)
(a,b)=(rcosθ,rsinθ)
と表すことができます。
2点(a,b),(cos(θ),sin(θ))間の距離をlとすると、その2乗は
l2={acos(θ)}2+{bsin(θ)}2=a22acos(θ)+cos2(θ)+b22bsin(θ)+sin2(θ)=(a2+b2)+{sin2(θ)+cos2(θ)}2{acos(θ)+bsin(θ)}=r2+12{acos(θ)+bsin(θ)}(sin2x+cos2x=1r=a2+b2)
となり、三角関数の性質sin(x)=sinx,cos(x)=cosxより
l2=r2+12{acosθ+b(sinθ)}=r2+12(acosθbsinθ)
となります。
(rcos(α+θ),rsin(α+θ))と(1,0)
 次に平面上の2点(rcos(α+θ),rsin(α+θ)),(1,0)を考えます。
(a,b)=(rcosα,rsinα),(1,0)=(cos0°,sin0°)であることより、これらの点はそれぞれ(a,b),(cosθ,sinθ)を原点を中心に反時計回りにθだけ回転させたものであるため、この2点間の距離もlとなります。
これら2点の座標をもちいてl2を表すと
l2={rcos(α+θ)1}2+{rsin(α+θ)0}2=r2cos2(α+θ)2rcos(α+θ)+1+r2sin2(α+θ)={r2sin2(α+θ)+r2cos2(α+θ)}+12rcos(α+θ)=r2{sin2(α+θ)+cos2(α+θ)}+12rcos(α+θ)=r2+12rcos(α+θ)(sin2x+cos2x=1)
となります。
(c),(d)より
r2+12(acosθbsinθ)=r2+12rcos(α+θ)acosθbsinθ=rcos(α+θ)
となります。
したがって、三角関数の差acosθbsinθ
r=a2+b2{cosα=aa2+b2sinα=ba2+b2
を満たす実数r,αをもちいて
acosθbsinθ=rcos(α+θ)
と表せることがわかります。

 (1),(2)をまとめると
acosθ±bsinθ=rcos(αθ)
実数r,α
r=a2+b2{cosα=aa2+b2sinα=ba2+b2
を満たす。
となります。

その3

(b,a)=(rcosα,rsinα)と(cos(θ-90°),sin(θ-90°))
 平面上の2点(b,a),(cos(θ90°),sin(θ90°))を考えます。
これはその1と比較するとa,bを入れ替え、θθ90°に置き換えたものとなります。
すると、その1と同様にすると
r=a2+b2{cosα=ba2+b2sinα=aa2+b2
を満たすr,αによって点(a,b)
(a,b)=(rcosθ,rsinθ)
と表すことができます。
2点(b,a),(cos(θ90°),sin(θ90°))間の距離をlの2乗は
l2=r2+12{bcos(θ90°)+asin(θ90°)}
となります。
ここで、
sin(θ90°)=sin{(90°θ)}cos(θ90°)=cos{(90°θ)}
であり、三角関数の性質sin(x)=sinx,cos(x)=cosxより
sin(θ90°)=sin(90°θ)cos(θ90°)=cos(90°θ)
三角関数の性質sin(90°x)=cosx,cos(90°x)=sinxより
sin(θ90°)=cosθcos(θ90°)=sinθ
となります。
したがって、l2
l2=r2+12{bsinθ+a(cosθ)}=r2+12(bsinθacosθ)
となります。
(rcos{90°+(α-θ)},rsin{90°+(α-θ)})と(1,0)
 次に平面上の2点(rcos{90°+(αθ)},rsin{90°+(αθ)}),(1,0)を考えます。
(b,a)=(rcosα,rsinα),(1,0)=(cos0°,sin0°),90°+(αθ)=α(θ90°)であることより、これらの点はそれぞれ(b,a),(cosθ,sinθ)を原点を中心に時計回りにθ90°だけ回転させたものであるため、この2点間の距離もlとなります。
これら2点の座標をもちいてl2を表すと
l2=[rcos{90°+(αθ)}1}2+[rsin{90°+(αθ)}0]2=r2cos2{90°+(αθ)}2rcos{90°+(αθ)}+1+r2sin2{90°+(αθ)}=[r2sin2{90°+(αθ)}+r2cos2{90°+(αθ)}]+12rcos{90°+(αθ)}=r2[sin2{90°+(αθ)}+cos2{90°+(αθ)}]+12rcos{90°+(αθ)}=r2+12rcos{90°+(αθ)}(sin2x+cos2x=1)
となります。
(e),(f)より
r2+12(bsinθacosθ)=r2+12rcos{90°+(αθ)}bsinθacosθ=rcos{90°+(αθ)}acosθbsinθ=rcos{90°+(αθ)}
となり、さらに三角関数の性質cos(90°+x)=sinxより
acosθbsinθ=r{sin(αθ)}=rsin(αθ)
となります。
したがって、三角関数の差acosθbsinθ
r=a2+b2{cosα=ba2+b2sinα=aa2+b2
を満たす実数r,αをもちいて
acosθbsinθ=rsin(αθ)
と表せることがわかります。

その4

(b,a)=(rcosα,rsinα)と(cos(90°-θ),sin(90°-θ))
 平面上の2点(b,a),(cos(90°θ),sin(90°θ))を考えます。
これはその1と比較するとa,bを入れ替え、θ90°θに置き換えたものとなります。
すると、その1と同様にすると
r=a2+b2{cosα=ba2+b2sinα=aa2+b2
を満たすr,αによって点(a,b)
(a,b)=(rcosθ,rsinθ)
と表すことができます。
2点(b,a),(cos(90°θ),sin(90°θ))間の距離をlの2乗は
l2=r2+12{bcos(90°θ)asin(90°θ)}
となります。
さらに、三角関数の性質sin(90°x)=cosx,cos(90°x)=sinxより
l2=r2+12(bsinθ+acosθ)=r2+12(acosθ+bsinθ)
となります。
(rcos{(α+θ)-90°},rsin{(α+θ)-90°})と(1,0)
 次に平面上の2点(rcos{(α+θ)90°},rsin{(α+θ)90°}),(1,0)を考えます。
(b,a)=(rcosα,rsinα),(1,0)=(cos0°,sin0°),(α+θ)90°=α(90°θ)であることより、これらの点はそれぞれ(b,a),(cosθ,sinθ)を原点を中心に時計回りに90°θだけ回転させたものであるため、この2点間の距離もlとなります。
これら2点の座標をもちいてl2を表すと
l2=[rcos{(α+θ)90°}1}2+[rsin{(α+θ)90°}0]2=r2cos2{(α+θ)90°}2rcos{(α+θ)90°}+1+r2sin2{(α+θ)90°}=[r2sin2{(α+θ)90°}+r2cos2{(α+θ)90°}]+12rcos{(α+θ)90°}=r2[sin2{(α+θ)90°}+cos2{(α+θ)90°}]+12rcos{(α+θ)90°}=r2+12rcos{(α+θ)90°}(sin2x+cos2x=1)
となります。
(g),(h)より
r2+12(acosθ+bsinθ)=r2+12rcos{(α+θ)90°}acosθ+bsinθ=rcos{(α+θ)90°}
となり、さらにcos(x90°)=sinxより
acosθ+bsinθ=rsin(α+θ)
が得られます。
したがって、三角関数の和acosθ+bsinθ
r=a2+b2{cosα=ba2+b2sinα=aa2+b2
を満たす実数r,αをもちいて
acosθ+bsinθ=rsin(α+θ)
と表せることがわかります。

 (3),(4)をまとめると
acosθ±bsinθ=rsin(α±θ)
実数r,α
r=a2+b2{cosα=ba2+b2sinα=aa2+b2
を満たす。
となります。

(1)(4)の変形

 得られた(1)(4)の式の左辺がbsinθ+acosθまたはbsinθacosθとなるよう、右辺の角度がθ+αまたはθαとなるように変形してみます。

(1)

acosθ+bsinθ=rcos(αθ)bsinθ+acosθ=rcos{(θα)}
三角関数の性質cos(x)=cosxより
bsinθ+acosθ=rcos(θα)

(2)

acosθbsinθ=rcos(α+θ)(bsinθacosθ)=rcos(θ+α)bsinθacosθ=rcos(θ+α)

(3)

acosθbsinθ=rsin(αθ)(bsinθacosθ)=rsin{(θα)}bsinθacosθ=rsin{(θα)}
三角関数の性質sin(x)=sinxより
bsinθacosθ=r{sin(θα)}bsinθacosθ=rsin(θα)

(4)

acosθ+bsinθ=rsin(α+θ)bsinθ+acosθ=rsin(θ+α)

(1),(2)をまとめると
bsinθ±acosθ=±rcos(θα)
実数r,α
r=a2+b2{cosα=aa2+b2sinα=ba2+b2
を満たす。
(3),(4)をまとめると
bsinθ±acosθ=rsin(θ±α)
実数r,α
r=a2+b2{cosα=ba2+b2sinα=aa2+b2
を満たす。
となります。これらはa,bが入れ替わっているだけで「三角関数の合成 sincosの係数をどうするか?」で紹介している公式と全く同じものになることがわかります。

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