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2024年7月30日

複素数平面上の3点がつくる角の大きさ

複素数平面上の∠ABC
 複素数平面上の3点$A(α),B(β),C(γ)$がつくる角$∠ABC$は複素数$α,β,γ$をもちいて
\[\large\angle ABC=\left|\arg\frac{\gamma-\beta}{\alpha-\beta}\right|\]
となります。

なぜこれで求めることができるのでしょうか?


 $∠ABC$を最初は線分$AB$が測りはじめの基準の反時計回りを正として測った線分$BC$までの一般角と考え、その後に符号を考慮しない角として再考することで、上記の式が成り立つことを確かめてみます。

点$B$が原点のとき

点Bが原点にあるときの複素数平面上の∠ABC
 角の頂点である点$B$が原点$O$にあるとき、すなわち$β=0$のときを考えます。
このとき、$∠ABC$は点$A(α)$の動径が基準の反時計回りを正として測った点$C(γ)$の動径までの一般角となるので、複素数の偏角の差より
\begin{align*}\angle ABC&=\arg\gamma-\arg\alpha\\[0.5em]&=\arg\frac{\gamma}{\alpha}\tag1\end{align*}
により求められます。
点$A(α)$の動径から点$C(γ)$の動径まで反時計回りに測った角度で最小のものを$θ_1$、時計回りに測った角度で$0$を除き最小のものを$θ_2$とすると、偏角の主値を$0\leqq\text{Arg}\ z<2\pi$としたとき
\begin{align*}\theta_1&=\text{Arg}\ \dfrac{\gamma}{\alpha}\\[1em]\theta_2&=\theta_1-2\pi=\text{Arg}\ \dfrac{\gamma}{\alpha}-2\pi\end{align*}
と書くことができます。
したがって、$\arg\dfrac{γ}{α}$は
\[\begin{aligned}\arg\dfrac{γ}{α}&=\theta_1+2n\pi&(n:整数)\\[0.5em]&=\theta_2+2(1+n)\pi\end{aligned}\tag2\]
と書くこともできます。
 $∠ABC$を符号を考慮しない角度として再考します。
一般角は基準となる測る方向があり、測り方が基準の方向と同じ方向か逆方向かを符号で表します。
一方、符号を考慮しない角度は測り方によらないもので、一般角から符号を取り払う、すなわち絶対値をとることで求めることができます。
すると、$(1)$の符号を考慮しない角度は
\[\angle ABC=\left|\arg\frac{\gamma}{\alpha}\right|\tag3\]
と表すことができます。
$(2)$より、$(3)$のとりうる値は$θ_1$または$|θ_2|$、あるいはどちらかと$2\pi$の自然数倍の和となります。
$(2)$より$\arg\dfrac{γ}{α}\leqq0$のとき、$0$以上の整数$k$をもちいると
\[\arg\frac{\gamma}{\alpha}=\theta_1+2k\pi\]
と書け、$θ_1\geqq0$かつ$2k\pi\geqq0$より
\[\left|\arg\frac{\gamma}{\alpha}\right|=\theta_1+2k\pi\]
$\arg\dfrac{γ}{α}>0$のとき、$n=-m$($m:$自然数)とおくと
\[\arg\frac{\gamma}{\alpha}=\theta_2+2(1-m)\pi\]
と書け、$θ_2<0$より
\begin{align*}\arg\frac{\gamma}{\alpha}&=-|\theta_2|+2(1-m)\pi\\[0.5em]&=-|\theta_2|-2(m-1)\pi\\[0.5em]&=-\bigl\{|\theta_2|+2(m-1)\pi\bigr\}\end{align*}
$|θ_2|>0$かつ$2(m-1)\pi\geqq0$より
\[\left|\arg\frac{\gamma}{\alpha}\right|=|\theta_2|+2(m-1)\pi\]
以上より、$(3)$のとりうる値は$θ_1$または$|θ_2|$、あるいはどちらかと$2\pi$の自然数倍の和であることがわかります。
しかし、$∠ABC$の大きさは通常$0\leqq∠ABC\leqq2\pi$の範囲で考えるので$(3)$のとりうる値は$θ_1$か$|θ_2|$の2つに限定されます。
このとき$(3)$のとりうる値で最小($\min\{θ_1,|θ_2|\}$)となるものは劣角(線分$AB,BC$のつくる角のうち小さいほう)の$∠ABC$、最大($\max\{θ_1,|θ_2|\}$)となるものは優角(線分$AB,BC$のつくる角のうち大きいほう)の$∠ABC$となります。
すなわち、$(3)$はとりうる値を適切に選択することで優角、劣角どちらの$∠ABC$も表すことができます。
 ちなみに$∠ABC=\left|\text{Arg}\ \dfrac{\gamma}{\alpha}\right|$とすると、$\text{Arg}\ \dfrac{\gamma}{\alpha}=θ_1$より$∠ABC=θ_1$であることのみを表し、$|θ_2|$は含まれません。

点$B$が原点以外のとき

3点A,B,Cを点Bが原点にくるように平行移動すると∠ABC=∠A'OC'
 点$B$が原点$O$以外の位置にあるときを考えます。
点$B$を原点$O$へ平行移動し、同じ移動量で2点$A,C$がそれぞれ点$A',C'$へ平行移動したとすると、$∠ABC=∠A'OC'$となります。
このとき、点$B(β)$が原点へ平行移動したときの移動量は$-β$なので、$A'(α-β),C'(γ-β)$となります。
したがって、$(3)$より
\begin{align*}\angle A'OC'&=\left|\arg\frac{\gamma-\beta}{\alpha-\beta}\right|\\[0.5em]\therefore\angle ABC&=\left|\arg\frac{\gamma-\beta}{\alpha-\beta}\right|\tag4\end{align*}
となることがわかります。
$β=0$のときの$(4)$が$(3)$なので、点$B$が原点$O$にあるときももちろん$(4)$を満たします。

 以上より、複素数平面上の3点$A(α),B(β),C(γ)$がつくる角$∠ABC$は
\[\large\angle ABC=\left|\arg\frac{\gamma-\beta}{\alpha-\beta}\right|\]
で表せることがわかります。

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