複素数平面上の3点$\text{A}(α),\text{B}(β),\text{C}(γ)$がつくる角$∠\text{ABC}$は複素数$α,β,γ$をもちいて
\[\large∠\text{ABC}=\left|\arg\frac{\gamma-\beta}{\alpha-\beta}\right|\]
となります。
なぜこれで求めることができるのでしょうか?
$∠\text{ABC}$を最初は線分$\text{AB}$が測りはじめの基準の反時計回りを正として測った線分$\text{BC}$までの一般角と考え、その後に符号を考慮しない角として再考することで、上記の式が成り立つことを確かめてみます。
点$\text{B}$が原点のとき
このとき、$∠\text{ABC}$は点$\text{A}(α)$の動径が基準の反時計回りを正として測った点$\text{C}(γ)$の動径までの一般角となるので、複素数の偏角の差より
\begin{align*}\angle
\text{ABC}&=\arg\gamma-\arg\alpha\\[0.5em]&=\arg\frac{\gamma}{\alpha}\tag1\end{align*}
により求められます。
点$\text{A}(α)$の動径から点$\text{C}(γ)$の動径まで反時計回りに測った角度で最小のものを$θ_1$、時計回りに測った角度で$0$を除き最小のものを$θ_2$とすると、偏角の主値を$0\leqq\text{Arg}\
z<2\pi$としたとき
\begin{align*}\theta_1&=\text{Arg}\
\dfrac{\gamma}{\alpha}\\[1em]\theta_2&=\theta_1-2\pi=\text{Arg}\
\dfrac{\gamma}{\alpha}-2\pi\end{align*}
と書くことができます。
したがって、$\arg\dfrac{γ}{α}$は
\[\begin{aligned}\arg\dfrac{γ}{α}&=\theta_1+2n\pi&(n:整数)\\[0.5em]&=\theta_2+2(1+n)\pi\end{aligned}\tag2\]
と書くこともできます。
$∠\text{ABC}$を符号を考慮しない角度として再考します。
一般角は基準となる測る方向があり、測り方が基準の方向と同じ方向か逆方向かを符号で表します。
一方、符号を考慮しない角度は測り方によらないもので、一般角から符号を取り払う、すなわち絶対値をとることで求めることができます。
すると、$(1)$の符号を考慮しない角度は
\[∠\text{ABC}=\left|\arg\frac{\gamma}{\alpha}\right|\tag3\]
と表すことができます。
$(2)$より、$(3)$のとりうる値は$θ_1$または$|θ_2|$、あるいはどちらかと$2\pi$の自然数倍の和となります。
$(2)$より$\arg\dfrac{γ}{α}\leqq0$のとき、$0$以上の整数$k$をもちいると
\[\arg\frac{\gamma}{\alpha}=\theta_1+2k\pi\]
と書け、$θ_1\geqq0$かつ$2k\pi\geqq0$より
\[\left|\arg\frac{\gamma}{\alpha}\right|=\theta_1+2k\pi\]
$\arg\dfrac{γ}{α}>0$のとき、$n=-m$($m:$自然数)とおくと
\[\arg\frac{\gamma}{\alpha}=\theta_2+2(1-m)\pi\]
と書け、$θ_2<0$より
\begin{align*}\arg\frac{\gamma}{\alpha}&=-|\theta_2|+2(1-m)\pi\\[0.5em]&=-|\theta_2|-2(m-1)\pi\\[0.5em]&=-\bigl\{|\theta_2|+2(m-1)\pi\bigr\}\end{align*}
$|θ_2|>0$かつ$2(m-1)\pi\geqq0$より
\[\left|\arg\frac{\gamma}{\alpha}\right|=|\theta_2|+2(m-1)\pi\]
以上より、$(3)$のとりうる値は$θ_1$または$|θ_2|$、あるいはどちらかと$2\pi$の自然数倍の和であることがわかります。
しかし、$∠\text{ABC}$の大きさは通常$0\leqq∠\text{ABC}\leqq2\pi$の範囲で考えるので$(3)$のとりうる値は$θ_1$か$|θ_2|$の2つに限定されます。
このとき$(3)$のとりうる値で最小($\min\{θ_1,|θ_2|\}$)となるものは劣角(線分$\text{AB, BC}$のつくる角のうち小さいほう)の$∠\text{ABC}$、最大($\max\{θ_1,|θ_2|\}$)となるものは優角(線分$\text{AB, BC}$のつくる角のうち大きいほう)の$∠\text{ABC}$となります。
すなわち、$(3)$はとりうる値を適切に選択することで優角、劣角どちらの$∠\text{ABC}$も表すことができます。
ちなみに$∠\text{ABC}=\left|\text{Arg}\
\dfrac{\gamma}{\alpha}\right|$とすると、$\text{Arg}\
\dfrac{\gamma}{\alpha}=θ_1$より$∠\text{ABC}=θ_1$であることのみを表し、$|θ_2|$は含まれません。
点$\text{B}$が原点以外のとき
点$\text{B}$を原点$\text{O}$へ平行移動し、同じ移動量で2点$\text{A, C}$がそれぞれ点$\text{A', C'}$へ平行移動したとすると、$∠\text{ABC}=∠\text{A'OC'}$となります。
このとき、点$\text{B}(β)$が原点へ平行移動したときの移動量は$-β$なので、$\text{A'}(α-β),\text{C'}(γ-β)$となります。
したがって、$(3)$より
\begin{align*}\angle
\text{A'OC'}&=\left|\arg\frac{\gamma-\beta}{\alpha-\beta}\right|\\[0.5em]\therefore\angle
\text{ABC}&=\left|\arg\frac{\gamma-\beta}{\alpha-\beta}\right|\tag4\end{align*}
となることがわかります。
$β=0$のときの$(4)$が$(3)$なので、点$\text{B}$が原点$\text{O}$にあるときももちろん$(4)$を満たします。
以上より、複素数平面上の3点$\text{A}(α),\text{B}(β),\text{C}(γ)$がつくる角$∠\text{ABC}$は
\[\large∠\text{ABC}=\left|\arg\frac{\gamma-\beta}{\alpha-\beta}\right|\]
で表せることがわかります。
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