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2025年11月19日

九点円とは?

九点円
 九点円とは、三角形の3辺の中点、各頂点から対辺またはその延長への垂線の足、各頂点と垂心を結ぶ線分の中点の9点を通る円のことです。オイラー円フォイエルバッハ円とも呼ばれます。
三角形にはこの円が必ず存在することを確かめてみようと思います。

 まずは、9点が相異なる三角形、すなわち直角三角形や二等辺三角形でない三角形について考えます。

直角三角形や二等辺三角形以外の三角形の場合

 九点円は三角形の3辺の中点を結んでできる三角形の外接円でもあるので、この外接円が他の6点も通ることを示す形で証明してみます。

3辺の中点を結んでできる三角形の外接円

三角形の各辺の中点を結んでできる三角形の外接円
 直角三角形や二等辺三角形でない$△\text{ABC}$の辺$\text{BC}, \text{CA}, \text{AB}$の中点をそれぞれ$\text{L}, \text{M}, \text{N}$とします。
すると、中点連結定理より
\begin{gather*}\text{BC}//\text{MN}\\[0.5em]\text{BC}:\text{MN}=2:1\\[1em]\text{CA}//\text{LN}\\[0.5em]\text{CA}:\text{LN}=2:1\\[1em]\text{AB}//\text{LM}\\[0.5em]\text{AB}:\text{LM}=2:1\end{gather*}
が成り立ちます。
$\text{BC}:\text{MN}=\text{CA}:\text{LN}$$=\text{AB}:\text{LM}=2:1$より、3組の辺の比が等しいので$△\text{LMN}$は$△\text{ABC}$と相似な三角形です。
この$△\text{LMN}$の外接円の中心(外心)がこれから証明する九点円の中心でもあるのですが、これがどこにあるのかについては別の記事に譲ります。

各頂点から対辺またはその延長への垂線の足

三角形の垂心Hと垂線の足D, E, F
 $△\text{ABC}$の頂点$\text{A}, \text{B}, \text{C}$からそれぞれの対辺$\text{BC}, \text{CA}, \text{AB}$またはその延長へおろした垂線の足を$\text{D}, \text{E}, \text{F}$とします。また、垂心を$\text{H}$とします。
まず、$△\text{LMN}$の外接円は点$\text{D}$を通るかについて考えます。
△LMNと△DNMは合同
点$\text{D}$と点$\text{M}, \text{N}$を結び、$△\text{DMN}$をつくります。
$△\text{LMN}$と$△\text{DNM}$に着目すると、
  • 共通の辺なので$\text{MN}=\text{NM}$
  • 以下の理由により$\text{LM}=\text{DN}$
    $△\text{ABC}$における中点連結定理より$\text{AB}:\text{LM}=2:1$、すなわち$\text{LM}=\dfrac{1}{2}\text{AB}$
    直角三角形$\text{ABD}$において、斜辺$\text{AB}$の中点$\text{N}$は外心なので$\text{AN}=\text{BN}=\text{DN}$、すなわち$\text{DN}=\dfrac{1}{2}\text{AB}$
  • 同様にして$\text{LN}=\text{DM}$
3組の辺の長さがそれぞれ等しいので、$△\text{LMN}$と$△\text{DNM}$は合同であることがわかります。
このことから$∠\text{MLN}=∠\text{NDM}$が成り立ちます。
すると、円周角の定理の逆より4点$\text{D}, \text{L}, \text{M}, \text{N}$は同一円周上にあるということがわかり、これは$△\text{LMN}$の外接円は点$\text{D}$を通ることを意味します。

これと同様の手順によって、$△\text{LMN}$の外接円は残る2点$\text{E}, \text{F}$も通ることを示すことができます。


各頂点と垂心を結ぶ線分の中点

頂点A, B, Cと垂心を結ぶ線分の中点をそれぞれP, Q, Rとする
 $△\text{ABC}$の各頂点と垂心を結ぶ線分$\text{AH}, \text{BH}, \text{CH}$それぞれの中点を$\text{P}, \text{Q}, \text{R}$とします。
まず、$△\text{LMN}$の外接円は2点$\text{P}, \text{Q}$を通るかについて考えます。
$△\text{HAB}$において中点連結定理より
\begin{gather*}\text{AB}//\text{PQ}\\[0.5em]\text{AB}:\text{PQ}=2:1\end{gather*}
$△\text{HBC}, △\text{HCA}$においても同様に
\begin{gather*}\text{CH}//\text{LQ}\\[0.5em]\text{CH}:\text{LQ}=2:1\\[1em]\text{CH}//\text{MP}\\[0.5em]\text{CH}:\text{MP}=2:1\end{gather*}
が成り立ちます。
四角形PQLMは長方形
 四角形$\text{PQLM}$に着目します。
$\text{AB}//\text{LM}, \text{AB}//\text{PQ}$より、$\text{LM}//\text{PQ}$であることがわかります。
また、$\text{CH}//\text{LQ}, \text{CH}//\text{MP}$より、$\text{LQ}//\text{MP}$であることがわかり、四角形$\text{PQLM}$は平行四辺形であることがわかります。
さらに$\text{AB}\perp \text{CH}$より、$\text{PQ}\perp \text{LQ}$すなわち$∠\text{PQL}=90°$であることがわかるので、四角形$\text{PQLM}$は長方形であることがわかります。
すると台形の中点連結定理より、辺$\text{LM}$と$\text{PQ}$の垂直二等分線は同一直線ということがわかります。
(まず、辺$\text{LM}$と$\text{PQ}$の中点をつないだ直線は辺$\text{LQ}, \text{MP}$に平行であることがいえ、これは辺$\text{LM}$と$\text{PQ}$の中点をつないだ直線はこれらの辺に対し垂直ということです。さらにこのことから辺$\text{LM}$と$\text{PQ}$の中点をつないだ直線はこれらの垂直二等分線であることがいえます。)
同様に、$△\text{HAB}, △\text{HBC}, △\text{HCA}$それぞれの三角形における中点連結定理より得られる
\begin{gather*}\text{AH}//\text{NQ}\\[0.5em]\text{BH}//\text{NP}\\[0.5em]\text{AH}:\text{NQ}=\text{BH}:\text{NP}=2:1\\[1em]\text{BC}//\text{QR}\\[0.5em]\text{BH}//\text{LR}\\[0.5em]\text{BC}:\text{QR}=\text{BH}:\text{LR}=2:1\\[1em]\text{CA}//\text{RP}\\[0.5em]\text{AH}//\text{MR}\\[0.5em]\text{CA}:\text{RP}=\text{AH}:\text{MR}=2:1\end{gather*}
を利用することで、四角形$\text{QRMN}$は長方形で対辺$\text{MN}, \text{QR}$の垂直二等分線は同一直線、四角形$\text{RPNL}$も長方形で対辺$\text{NL}, \text{RP}$の垂直二等分線は同一直線ということもわかります。
△LMNと△PQRは合同かつ外接円が同一
 今度は$△\text{PQR}$に着目します。
$△\text{LMN}$と$△\text{PQR}$について
  • 上記より$\text{LM}=\text{PQ}$
  • $\text{BC}:\text{MN}=\text{BC}:\text{QR}=2:1$より$\text{MN}=\text{QR}$
  • $\text{CA}:\text{NL}=\text{CA}:\text{RP}=2:1$より$\text{NL}=\text{RP}$
3組の辺の長さがそれぞれ等しいので合同であることがわかります。
また、辺$\text{LM}$と$\text{PQ}$、辺$\text{MN}$と$\text{QR}$、辺$\text{NL}$と$\text{RP}$それぞれの辺の組の垂直二等分線が同一直線ということは、$△\text{PQR}$の外心は$△\text{LMN}$の外心と同一点であるということです。
さらに、$△\text{LMN}$と$△\text{PQR}$が合同ということは、この2つの三角形の外接円の半径は等しいということです。

したがって、中心が同一点で半径が等しいので$△\text{LMN}$の外接円と$△\text{PQR}$の外接円は同一の円であり、これは$△\text{LMN}$の外接円は3点$\text{P}, \text{Q}, \text{R}$を通ることを意味します。


以上より、$△\text{LMN}$の外接円は6点$\text{D}, \text{E}, \text{F}, \text{P}, \text{Q}, \text{R}$を通るため、直角三角形や二等辺三角形でない三角形は九点円をもつことがわかります。


 次に、3辺の中点、頂点から対辺またはその延長への垂線の足、頂点と垂心を結ぶ線分の中点のうちいくつかが同一点となっている直角三角形や二等辺三角形について考えます。

直角三角形の場合

直角三角形の場合の九点円
 $∠\text{A}=90°$である直角三角形$\text{ABC}$の辺$\text{BC}, \text{CA}, \text{AB}$それぞれの中点を$\text{L}, \text{M}, \text{N}$として、$△\text{LMN}$の外接円が各頂点から対辺への垂線の足と頂点と垂心を結ぶ線分の中点を通るかを示してみます。

各頂点から対辺への垂線の足

鋭角の頂点からそれぞれの対辺への垂線の足は直角の頂点と同一
 頂点$\text{A}$から斜辺$\text{BC}$へおろした垂線の足を$\text{D}$とします。
鋭角である$∠\text{B}, ∠\text{C}$の頂点から対辺への垂線の足は頂点$\text{A}$と同一の点となります。

したがって、各頂点から対辺への垂線の足は点$\text{A}$と$\text{D}$の2点のみとなります。

△LMNと△DNMは合同
 $△\text{LMN}$の外接円が点$\text{D}$を通るかは直角三角形や二等辺三角形でない三角形の場合と同様の方法で示すことができます。
 $△\text{LMN}$の外接円が頂点$\text{A}$を通るかは以下の方法で示すことができます。
四角形ANLMは長方形なので△LMNの外接円に内接する
直角三角形$\text{ABC}$と$△\text{LMN}$は相似であることより、四角形$\text{ANLM}$において$∠\text{MAN}=∠\text{MLN}=90°$が成り立ちます。
したがって、円に内接する四角形の定理の逆より4点$\text{A}, \text{L}, \text{M}, \text{N}$が同一円周上にある、すなわち$△\text{LMN}$の外接円は頂点$\text{A}$を通ることがわかります。

各頂点と垂心を結ぶ線分の中点

 垂心が頂点$\text{A}$と同一点であるため、頂点$\text{B}, \text{C}$と垂心を結ぶ線分の中点はそれぞれ辺$\text{AB}, \text{CA}$の中点$\text{N}, \text{M}$と同一点であり、頂点$\text{A}$と垂心を結ぶ線分はないため中点がありません。(あるいは、長さ$0$の線分と考えて中点は頂点$\text{A}$と同一点と考えることができます。)

したがって、$△\text{LMN}$の外接円は各頂点と垂心を結ぶ線分の中点を通ることがわかります。


直角三角形の九点円
以上より、直角三角形も(通る点が5個に減っているものの)九点円をもつことがわかります。

二等辺三角形の場合

二等辺三角形の場合の九点円
 $\text{AB}=\text{CA}$である二等辺三角形$\text{ABC}$の辺$\text{BC}, \text{CA}, \text{AB}$それぞれの中点を$\text{L}, \text{M}, \text{N}$として、$△\text{LMN}$の外接円が各頂点から対辺またはその延長への垂線の足と頂点と垂心を結ぶ線分の中点を通るかを示してみます。

各頂点から対辺またはその延長へおろした垂線の足

各頂点からそれぞれの対辺へおろした垂線
 頂点$\text{B}, \text{C}$からそれぞれの対辺$\text{CA}, \text{AB}$またはその延長へおろした垂線の足を$\text{D}, \text{E}$とします。
頂点$\text{A}$から対辺$\text{BC}$へおろした垂線の足は辺$\text{BC}$の中点$\text{L}$と同一の点となります。
△LMNと△NLDは合同
$△\text{LMN}$の外接円が点$\text{D}, \text{E}$を通るかは直角三角形や二等辺三角形でない三角形の場合と同様の方法で示すことができます。
直角二等辺三角形の鋭角の頂点から対辺への垂線の足は直角の頂点と同一
 直角二等辺三角形の場合は、2点$\text{D}, \text{E}$は頂点$\text{A}$と同一の点となり、直角三角形の場合と同様の方法で示すことができます。
正三角形の垂線の足は各辺の中点と同一
 正三角形の場合は、すべての垂線の足が辺の中点と同一の点となっているので、$△\text{LMN}$の外接円が各頂点から対辺へおろした垂線の足を明らかに通ります。

各頂点と垂心を結ぶ線分の中点

各頂点と垂心を結ぶ線分の中点
 二等辺三角形$\text{ABC}$の各頂点と垂心を結ぶ線分$\text{AH}, \text{BH}, \text{CH}$それぞれの中点を$\text{P}, \text{Q}, \text{R}$とします。
中点を結んでできる長方形と△LMNと同一の外接円をもつ△PQR
$△\text{LMN}$の外接円が点$\text{P}, \text{Q}, \text{R}$を通るかは直角三角形や二等辺三角形でない三角形の場合と同様の方法で示すことができます。
また、直角二等辺三角形の場合は、頂点$\text{B}, \text{C}$と垂心を結ぶ線分の中点はそれぞれ$\text{N}, \text{M}$と同一点であり、頂点$\text{A}$と垂心を結ぶ線分はないため中点がない(あるいは頂点$\text{A}$と同一点)ので、直角三角形の場合と同様の方法で示すことができます。

直角二等辺三角形、正三角形、その他の二等辺三角形の九点円
以上より、二等辺三角形の場合も(通る点が直角二等辺三角形の場合は4個、正三角形の場合は6個、それ以外の二等辺三角形の場合は8個に減っているものの)九点円をもつことがわかります。

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