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令和6年度共通テスト 数学Ⅰ・A 第4問(3)だけ解説してみる

 N進法タイマーの表示の変化がN進法の下3桁と同じであることに着目するとタイマーの表示が$012$となるのは、経過時間がN進法で$1000x+12$[秒]($x:$整数)のときであることがわかります。

すると4進法タイマーの場合、$1000$は10進数で$4^3=64$、$12$は$4^1+4^0×2=6$なので、タイマーの表示が$012$であるときの経過時間は10進数で$64x+6$[秒]ということです。

経過時間を$l$[秒]とおいているので
\[l=64x+6\]
という式を立てることができます。これは$l$は$64$の倍数に$6$を加えたものに等しい、すなわち$l$を$64$で割った余りが$6$であることを表しています。

 同様に3進法タイマーの場合、$1000$は10進数で$3^3=27$、$12$は$3^1+3^0×2=5$なので、タイマーの表示が$012$であるときの経過時間は10進数で$27y+5$[秒]($y:$整数)ということです。

3進法タイマーと4進法タイマーを同時にスタートさせ、初めて同時に$012$を表示するということは、それぞれのタイマーの表示が$012$となるときの経過時間について
\begin{equation}64x+6=27y+5\end{equation}
が成り立ち、これを満たす整数の組$(x,y)$が最小の自然数の組であるということです。
$(1)$を変形すると
\[-64x+27y=1\tag*{(1)'}\]
という不定方程式となるので、まずはユークリッドの互除法をもちいてすべての整数解を求めます。
$y,x$それぞれの係数の絶対値$27,64$は$27=3^3,$$64=4^3=2^6$より共通する素因数がないので互いに素であることがわかります。
この2つの数に対しユークリッドの互除法を余りに$1$が現れるまで行います。
\begin{align}\require{color}64\div\textcolor{red}{27}&=2\ 余り\textcolor{blue}{10}\\[1em]27\div\textcolor{red}{10}&=2\ 余り\textcolor{blue}{7}\\[1em]10\div\textcolor{red}{7}&=1\ 余り\textcolor{blue}{3}\\[1em]7\div\textcolor{red}{3}&=2\ 余り\textcolor{blue}{1}\end{align}
これら$(2)~(5)$を変形すると
\begin{align*}64-27\cdot2&=10\tag*{(2)'}\\[1em]27-10\cdot2&=7\tag*{(3)'}\\[1em]10-7&=3\tag*{(4)'}\\[1em]7-3\cdot2&=1\tag*{(5)'}\end{align*}
となります。
$×$を残したまま$(5)'$に$(4)'$を代入すると
\begin{align*}7-(10-7)\cdot2&=1\\[0.5em]7\cdot3-10\cdot2&=1\end{align*}
これに$(3)'$を代入すると
\begin{align*}(27-10\cdot2)\cdot3-10\cdot2&=1\\[0.5em]27\cdot3-10\cdot8&=1\end{align*}
さらに$(2)'$を代入すると
\begin{align*}27\cdot3-(64-27\cdot2)\cdot8&=1\\[0.5em]-64\cdot8+27\cdot19&=1\tag{6}\end{align*}
となり、$(1)'$と$(6)$を比較すると整数解の1つは$(x,y)=(8,19)$であることがわかります。
$(1)'-(6)$より
\begin{array}{l}&-64x&+27y&=1\\[0.5em]-)&-64\cdot8&+27\cdot19&=1\\[0.5em]\hline&-64(x-8)&+27(y-19)&=0\end{array}
変形して
\[64(x-8)=27(y-19)\]
となります。
前述の通り$27$と$64$は互いに素であるので、この等式が成立するということは$y-19$は$64$の倍数、$x-8$は$27$の倍数であるということです。
そこで両辺の値を整数$k$をもちいて
\[64(x-8)=27(y-19)=27\cdot64k\]
と表せるとすれば、
$x-8=27k$より
\[x=27k+8\]
$y-19=64k$より
\[y=64k+19\]
となり、$(x,y)=(27k+8,64k+19)$がすべての整数解となります。
この中で$(x,y)$が最小の自然数の組となるのは$k=0$のとき、すなわち最初に求まった整数解$(x,y)=(8,19)$であることがわかります。
したがって、3進法タイマーと4進法タイマーを同時にスタートさせ、初めて同時に$012$を表示するときの経過時間$m$は$64x+6$に$x=8$を代入した
\begin{align*}m&=64\cdot8+6\\[0.5em]&=\mathbf{518}\end{align*}
となります。($27y+5$に$y=19$を代入しても構いません。)

 6進法タイマーが$012$を表示するのは、$1000$は10進数で$6^3=216$、$12$は$6^1+6^0×2=8$なので、$216z+8$[秒]($z:$整数)経過したときです。
なので、4進法タイマーと6進法タイマーが初めて同時に$012$を表示するのは
\begin{equation}64x+6=216z+8\end{equation}
を満たす最小の自然数の組$(x,z)$です。
$(6)$を変形すると
\[64x-216z=2\]
両辺を$2$で割れるので割ると
\[32x-108z=1\]
となります。
ここで左辺を
\[2(16x-54z)=1\]
と変形すると、左辺は$x,z$が整数であることより$16x-54z$も整数なので$2$の倍数、すなわち偶数です。対して右辺は$1$、すなわち奇数です。
両辺で偶奇が一致していないので、この不定方程式に整数解は存在しません。
したがって、4進法タイマーと6進法タイマーを同時にスタートさせたとき同時に$012$を表示することはありません。

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