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2023年10月26日

三平方の定理の逆は成り立つ?

直角三角形ABC
 三平方の定理とは、
「直角三角形の直角をつくる辺の長さをそれぞれ$a,b$、斜辺の長さを$c$とすると$a^2+b^2=c^2$が成り立つ。」
というものです。

この逆は成り立つでしょうか?


 三平方の定理の逆は、
「3辺の長さがそれぞれ$a,b,c$の三角形に$a^2+b^2=c^2$が成り立つとき、その三角形は長さ$c$の辺を斜辺とする直角三角形である。」
となります。

これが成り立つことを確かめてみます。


 $△ABC$の辺$BC,CA,AB$の長さをそれぞれ$a,b,c$とし、頂点$C$から直線$AB$へ垂線をおろします。垂線の足を$D$とし、$AD,BD$の長さをそれぞれ$x,y$とします。
このとき、垂線の足の位置には3つの場合が考えられます。

点$D$が2点$A,B$間にあるとき

垂線の足が両端を除く辺上にあるとき
 垂線の足$D$が2点$A,B$間にあるとき$△ABC$は2つの直角三角形$△ACD$と$△BCD$にわかれます。
$△ACD$において三平方の定理より
\begin{equation}x^2+CD^2=b^2\end{equation}
が成り立ちます。
また、$△BCD$において三平方の定理より
\begin{equation}x^2+CD^2=a^2\end{equation}
が成り立ちます。
$(1)+(2)$より
\begin{align*}x^2+y^2+2CD^2&=a^2+b^2\\[0.5em]&=c^2&(\because a^2+b^2=c^2)\end{align*}
ここで、$x+y=c$であることを考えれば$(x+y)^2=x^2+y^2+2xy=c^2$なので
\begin{align*}x^2+y^2+2CD^2&=x^2+y^2+2xy\\[0.5em]CD^2&=xy\\[0.5em]CD&=\sqrt{xy}&(\because CD>0)\end{align*}
となります。
ところで$△ACD$と$△BCD$それぞれの辺の長さの比において
\begin{align*}AD:CD&=x:\sqrt{xy}\\[0.5em]&=\sqrt{x}:\sqrt{y}\\[1em]CD:BD&=\sqrt{xy}:y\\[0.5em]&=\sqrt{x}:\sqrt{y}\end{align*}
であり$∠ADC=∠CDB=90°$、2組の辺の比とその間の角がそれぞれ等しいので$△ACD$と$△BCD$は相似であることがわかります。
このことから
\begin{equation}∠CAD=∠BCD\end{equation}
また、直角三角形の2つの鋭角の和は$90°$なので
\begin{equation}∠ACD+∠CAD&=90°\end{equation}
$(3),(4)$より
\[∠ACD+∠BCD=∠ACB=90°\]
$∠ACB$が直角であることよりその対辺$AB$が斜辺、すなわち$△ABC$は辺$AB$を斜辺とする直角三角形であることがわかります。

点$D$が点$A$または$B$と重なるとき

垂線の足が頂点にあるとき
 点$D$が点$A$または$B$と重なるとき$△ABC$は$∠BAC$または$∠ABC$が直角である直角三角形となります。
上図のように点$D$が点$B$と重なり$∠ABC$が直角である直角三角形で考えます。このとき$x=c,y=0$です。
三平方の定理より
\begin{equation}a^2+c^2=b^2\end{equation}
が成り立ちます。
しかし、$△ABC$は$a^2+b^2=c^2$が成り立つ三角形なので、$(5)$も満たすことができるかを調べます。
辺々を引くと
\begin{align*}c^2-b^2&=b^2-c^2\\[0.5em]c^2-b^2&=-(c^2-b^2)\end{align*}
となります。正負が反転しても等式が成立するのは$c^2-b^2=0$のときだけなので
\begin{align*}c^2&=b^2\\[0.5em]b&=c&(\because b,c>0)\end{align*}
これを$(5)$に代入すると
\begin{align*}a^2+b^2&=b^2\\[0.5em]a^2&=0\\[0.5em]a&=0\end{align*}
となるため、$△ABC$が成立しません。
したがって、$a^2+b^2=c^2$と$(5)$が同時に成立するような三角形は存在しないことがわかります。これは点$D$が点$A$と重なる場合でも同様です。

点$D$が辺$AB$の延長上にあるとき

垂線の足が辺の延長上にあるとき
 点$D$が辺$AB$上になく、その延長上にあるとき2つの直角三角形$△ACD$と$△BCD$ができます。
上図のように点$D$が辺$AB$の$B$の側の延長上にある場合を考えます。
$△ACD$において三平方の定理より
\begin{equation}x^2+CD^2=b^2\end{equation}
が成り立ちます。
また、$△BCD$において三平方の定理より
\begin{equation}x^2+CD^2=a^2\end{equation}
が成り立ちます。
$(6)+(7)$より
\begin{align*}x^2+y^2+2CD^2&=a^2+b^2\\[0.5em]&=c^2&(\because a^2+b^2=c^2)\end{align*}
ここで、$x-y=c$であることを考えれば$(x-y)^2=x^2+y^2-2xy=c^2$なので
\begin{align*}x^2+y^2+2CD^2&=x^2+y^2-2xy\\[0.5em]CD^2&=-xy\end{align*}
となります。
しかし、$x>0,y>0$より$-xy<0$なので$CD^2>0$であることと矛盾します。
ゆえに、点$D$は辺$AB$の$B$の側の延長上にないことがわかります。これは点$D$が辺$AB$の$A$の側の延長上にある場合でも同様です。
したがって、この場合を満たすような三角形は存在しないことがわかります。

 以上より、三平方の定理の逆が成り立つことがわかります。

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