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2026年10月5日

幾何ベクトルとは? (幾何ベクトル・幾何ベクトルの基本性質)

 幾何ベクトルとは、平面上あるいは空間内において向きと大きさをもつ量のことです。
幾何ベクトルは、平面上においては平面ベクトル、空間内においては空間ベクトルと呼ぶこともあります。また、単にベクトルとも呼ばれます。

向きと大きさをもつ量の例
 向きと大きさをもつ量とは、例えば「東に$6$m進む」のように「東」という向きと「$6$m」という大きさ(この場合は長さ)がセットになったもののことです。
向きと大きさをもつ量とは、位置をもたない量であるともいうことができます。これは、どこにあっても向きと大きさがそれぞれ等しければ同じものとみなすということです。
先ほどの例えの「東に$6$m進む」が(厳密には北極点や南極点ではあてはまりませんが)地球上どこでも同じ意味をもつようなものです。
同様に、幾何ベクトルも位置にかかわらず、向きと大きさがそれぞれ等しい幾何ベクトルは同じであるとされます。

有向線分の向きと長さは、それぞれ幾何ベクトルの向きと大きさを表す
 幾何ベクトルは、有向線分(矢印)で表されます。
矢印の向きが幾何ベクトルの向きを、矢印の長さが幾何ベクトルの大きさを表します。
始点がA、終点がBの有向線分ABが表す幾何ベクトルはABベクトル
矢印の根元の点を始点、矢印の先端の点を終点といいます。
始点を$\text{A}$、終点を$\text{B}$とする有向線分$\text{AB}$によって表される幾何ベクトルのことを$\vec{\text{AB}}$と書きます。あるいは、ベクトルそのものを文字で表し、$\vec{a}$のように書くこともあります。
ABベクトルの大きさは、始点Aから終点Bまでの距離、すなわち線分ABの長さ
 幾何ベクトルの大きさは、幾何ベクトルを表す有向線分の長さ、すなわち始点から終点までの距離となります。
幾何ベクトル$\vec{\text{AB}}$の大きさは、$|\vec{\text{AB}}|$と表し、これは通常の線分$\text{AB}$の長さに等しいので、
\[|\vec{\text{AB}}|=\text{AB}\]
が成り立ちます。
幾何ベクトル$\vec{a}$においても、同様にその大きさは$|\vec{a}|$と表します。$|\vec{a}|$の値は$0$以上の実数となります。

 向きと大きさがそれぞれ等しいが異なる位置にある2つの有向線分が表す幾何ベクトルは、上述したように互いに等しい幾何ベクトルとなります。
有向線分AB, CDの向きと長さがそれぞれ等しいならば、それらが表すABベクトル、CDベクトルは互いに等しい
例えば、異なる4点$\text{A}, \text{B}, \text{C}, \text{D}$があり、有向線分$\text{AB}, \text{CD}$を引いたとします。
有向線分としては、向きと長さがそれぞれ等しかったとしても、異なる位置にあるので互いに別の有向線分であると区別することができます。
しかし、それぞれが表す幾何ベクトル$\vec{\text{AB}}, \vec{\text{CD}}$においては、位置にかかわらず全く同じものとなります。

幾何ベクトルの基本性質

 幾何ベクトルには、次のような性質があります。

零ベクトル

 大きさが$0$の幾何ベクトルを零ベクトル(ゼロベクトル)といい、$\vec{0}$と表します。
すなわち、幾何ベクトル$\vec{a}$について、
\[\large|\vec{a}|=0\ \Leftrightarrow\ \vec{a}=\vec{0}\]
という同値関係が成り立ちます。
始点と終点がAのAAベクトルは零ベクトル
大きさが$0$ということは、有向線分の長さが$0$ということです。
長さが$0$の有向線分は始点と終点が一致しているため、零ベクトルを表す有向線分は1つの点で表されます。
零ベクトルの向きは定められていません。
有向線分で考えると、向きは始点から終点をみることでわかります。すなわち、異なる2点であれば向きは1つに定まります。
しかし、零ベクトルは大きさが$0$のため始点と終点は一致しており、向きをただ1つに定めることができません。

ただし、零ベクトルの向きは定められていませんが、明確にベクトルの1つである点には注意です。


逆ベクトル

逆ベクトルは元のベクトルと大きさは等しいが、向きが逆
 幾何ベクトル$\vec{a}$に対し、大きさは等しいが逆向きのベクトルのことを$\vec{a}$の逆ベクトルといい、$-\vec{a}$と表します。
大きさが等しいので、
\[|\vec{a}|=|-\vec{a}|\]
が成り立ちます。

零ベクトルの逆ベクトルは零ベクトル自身であるとします。


幾何ベクトルの定数倍

 幾何ベクトル$\vec{a}$に対し、定数$p$を掛けることができ、$p\vec{a}$と表します。

ベクトルに掛ける定数のことをスカラーといい、ベクトルの定数倍のことをスカラー倍と呼ぶことがあります。

ここでは定数$p$は実数であるとします。
 零ベクトルでない幾何ベクトル$\vec{a}$の定数倍について次のようになります。
ベクトルの実数倍
$p=1$のとき、$p\vec{a}=1\vec{a}$は$\vec{a}$そのものを表します。
すなわち、
\[\large1\vec{a}=\vec{a}\]
が成り立ちます。
$p>0$のとき、$p\vec{a}$は、$\vec{a}$と向きが等しく、大きさが$p$倍の幾何ベクトルとなります。
$p=-1$のとき、$p\vec{a}=(-1)\vec{a}$は、$\vec{a}$の逆ベクトルとなります。
すなわち、
\[\large(-1)\vec{a}=-\vec{a}\]
が成り立ちます。
$p<0$のとき、$p\vec{a}$は、$\vec{a}$と向きが逆で、大きさが$|p|$倍の幾何ベクトルとなります。
$p=0$のときは、大きさが$0$となるため零ベクトルとなります。
すなわち、
\[\large0\vec{a}=\vec{0}\]
が成り立ちます。
 また、零ベクトルの定数倍について、定数$p$にかかわらず大きさは$0$のままであり、
\[\large p\vec{0}=\vec{0}\]
が成り立ちます。

bベクトルがaベクトルの実数倍で表せるとき、aベクトルとbベクトルは平行
 零ベクトルでない幾何ベクトル$\vec{a}$と幾何ベクトル$\vec{b}$について、
\[\large \vec{b}=p\vec{a}\]
を満たす実数$p$が存在するとき、$\vec{a}$と$\vec{b}$は平行であるといいます。
$\vec{b}$が零ベクトルでないとき、$\vec{a}$と$\vec{b}$は$p>0$ならば同じ向き、$p<0$ならば互いに逆向きなので、
$\vec{a}, \vec{b}$がともに零ベクトルでないとき、$\vec{a}, \vec{b}$が平行であるとは、向きが同じか互いに逆であること。
を意味します。
なお、零ベクトルはどの幾何ベクトルとも平行とします。

幾何ベクトルの和

ベクトルの和
 2つの幾何ベクトル$\vec{a}, \vec{b}$は足し合わせることができます。
$\vec{a}, \vec{b}$の和$\vec{a}+\vec{b}$は、$\vec{a}$を表す有向線分の終点に$\vec{b}$を表す有向線分の始点が重なるように$\vec{b}$を平行移動したときの、$\vec{a}$の始点から$\vec{b}$の終点までの有向線分で表される幾何ベクトルとなります。
ベクトルの和の例
上の例でいえば、「東に$6$m、北に$6$m進む」とたどり着ける地点に最短距離で進む、すなわち「北東に$6\sqrt{2}$m進む」ことが幾何ベクトルの和に相当します。
ベクトルの和の交換法則
 $\vec{a}$と$\vec{b}$を入れ替えた和$\vec{b}+\vec{a}$は、$\vec{a}+\vec{b}$と等しい幾何ベクトルになります。
なぜなら、どちらも$\vec{a}, \vec{b}$それぞれを表す有向線分のみからなる平行四辺形の同じ対角線に相当し、かつ向きが等しい有向線分によって表されるからです。
このことから、交換法則
\[\large\vec{a}+\vec{b}=\vec{b}+\vec{a}\]
が成り立つことがわかります。
ただし、$\vec{a}$または$\vec{b}$が零ベクトルのときや、$\vec{a}, \vec{b}$が平行なときは、平行四辺形がつぶれたり、頂点が重なったりする特別な場合として考えます。
このような特別な場合のうち、特筆すべきものとして次が挙げられます。
零ベクトルを含むベクトルの和
幾何ベクトル$\vec{a}$とその逆ベクトル$-\vec{a}$について
\[\large\vec{a}+(-\vec{a})=(-\vec{a})+\vec{a}=\vec{0}\]
幾何ベクトル$\vec{a}$と零ベクトル$\vec{0}$について
\[\large\vec{a}+\vec{0}=\vec{0}+\vec{a}=\vec{a}\]

幾何ベクトルの差

ベクトルの差
 2つの幾何ベクトル$\vec{a}, \vec{b}$は差をとることができます。
$\vec{a}, \vec{b}$の差$\vec{a}-\vec{b}$は、$\vec{a}$と$\vec{b}$の逆ベクトルの和、すなわち
\[\large\vec{a}-\vec{b}=\vec{a}+(-\vec{b})\]
となります。
ベクトルの差を表す有向線分
ところで、$\vec{a}, -\vec{b}$それぞれを表す有向線分のみからなる平行四辺形と、$\vec{a}, \vec{b}$それぞれを表す有向線分のみからなる平行四辺形は、$-\vec{b}$と$\vec{b}$の向きが互いに逆であるだけなので、図形としては合同です。
$\vec{a}-\vec{b}$は、前者の平行四辺形の対角線のうち、$\vec{a}$の始点から$-\vec{b}$の終点までの有向線分で表されます。
後者の平行四辺形でこれに対応するのは、対角線のうち$\vec{b}$の終点から$\vec{a}$の終点までの有向線分で表される幾何ベクトルとなります。
aベクトル-bベクトルとbベクトル-aベクトルは互いに逆ベクトル
 $\vec{a}$と$\vec{b}$を入れ替えた差$\vec{b}-\vec{a}$は、$\vec{a}-\vec{b}$の逆ベクトルとなります。
すなわち、
\[\large\vec{b}-\vec{a}=-(\vec{a}-\vec{b})\]
が成り立ちます。
 また、幾何ベクトルの和でみたような特別な場合のうち、特筆すべきものとして次が挙げられます。
零ベクトルを含むベクトルの差
幾何ベクトル$\vec{a}$について
\[\large\vec{a}-\vec{a}=\vec{0}\]
幾何ベクトル$\vec{a}$と零ベクトル$\vec{0}$について
\begin{gather*}\large\vec{a}-\vec{0}=\vec{a}\\[1em]\large\vec{0}-\vec{a}=-\vec{a}\end{gather*}

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